山形県の米沢と聞けばいろいろと思い浮かぶ。米沢牛の駅弁、戦国武将伊達政宗の生地、「成せばなる 成さねばならぬ 何事も…」の上杉鷹山などが定番だろうか。そして忘れてならないもうひとつは、米沢は帝人、大学発ベンチャーの発祥の地であることだ▼「日本の人造絹糸の歴史は、金子直吉とともに始まる」。1世紀以上も前、鈴木商店の金子は外国人居留地の商館で初めて人絹(レーヨン)にふれ、その国産化に野心を抱く。この金子に、米沢高等工業学校(現・山形大学)講師だった秦逸三と東大時代の同窓である久村清太は人絹の研究の援助を求めた▼鈴木商店は米沢高工に寄付をし、秦らの研究を支援。その後、工業化に成功し、1918年に米沢で帝国人造絹糸(現・帝人)を設立した。それから100年。先月末に帝人は創業100周年を記念し、米沢市で関連イベントを開いた▼同じ山形県の鶴岡市には、人工合成クモ糸で一躍有名になった「Spiber」がある。こちらは内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)に参画している。プログラムは今年度で終了するが、その成果を継承・発展させる新たな段階に進むという。一世紀の時を隔てて、同じ県の企業が次世代の糸を合成する夢に賭け、それを果たす。ロマンあふれる話である。(18・10・31)

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