企業が持続的成長を遂げるには、市場環境の変化に迅速に対応することが必要だ。顧客志向の強いファイン・スペシャリティケミカル製品のなかで代表的な塗料や印刷インキ、粘・接着剤といった分野でも、需要環境は刻々変化し、各社は必死に対応している。市場動向を機敏に捉え、さらなるニーズ立脚型の事業展開が求められる。
 市場環境変化の一つの例が紫外線(UV)硬化技術の普及だろう。省エネ・低ランニングコストなどからLED光源対応品も相次ぎ開発され、市場拡大に拍車がかかっている。
 その動きは2017年の印刷インキ出荷額に顕著に表れた。UV硬化型インキを含む「その他」インキの出荷額が、食品包装向けを中心に近年成長を遂げてきたグラビアインキをついに上回った。付加価値の高いフォトレジスト用途も「その他」に含まれるが、オフセットインキからの移行が進むUVインキが大きく貢献している。
 粘・接着剤も、工程の時間短縮や省電力化が図れる特徴からUV硬化タイプが伸長。さらにレーザーを用いて高速硬化する接着システムも採用が始まっており、電子材料や自動車分野における構造接着用途への展開が期待されている。
 塗料における市場環境の変化は、環境意識の高まりにともなう水系シフトの動きだ。揮発性有機化合物(VOC)フリーで安全性が高いといった点で溶剤系塗料からの切り替えが進展。環境規制強化が進む欧州や中国で、この動きは顕著だ。
 とくに塗料の最大市場である中国では、急速な環境規制強化を背景に日本を上回るスピードで水系シフトが進んでいるという。年の環境保護法改正でVOC規制が強化されたほか、今年から導入された環境保護税などを背景に工業用や自動車、建築の各分野で脱溶剤化の進展が見込まれる。この傾向は今後も続く見通しで、これを商機と捉えて日本企業も同国市場で積極展開を図っている。
 多くの化学企業が古くから手掛ける合成染料は、主力用途である繊維・テキスタイル製品の世界的な中国生産移管などを背景に現地生産化が進んだ。年には輸入量が国内生産量を上回る逆転現象が起こり、現在では国内生産に対して輸入量は1・7倍の規模となった。環境変化に対応を図ってきた一例といえるだろう。
 市場動向の変化に、いかに迅速対応を図るかが勝負の分かれ目であり、それをいち早く研究開発や事業展開に反映させることが求められる。中長期的な視点を持った事業体制の構築が、さらに重要性を増してきた。

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