カンボジアで来月、総選挙が行われる。フン・セン政権は昨年、最大野党・救国党の党首を逮捕、解党命令を出し、現地マスコミへの圧力も強めるなど強権化を進めている。欧米は、これを批判し、援助やビザ発給を一部停止するなど制裁措置を行った。他方、南シナ海問題で中国寄りの姿勢を示す同政権を、中国政府は全面的に支援している。この構図には欧米と中国の対立が透けてみえる。そのなか日本からは4月に河野太郎外務大臣が表敬訪問し「民意が適正に反映できる選挙であってほしい」と働き掛けるなど対話による政情安定化を求めている。
 メコン地域のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)4カ国は「チャイナ・プラス・ワン」もしくは「タイ・プラス・ワン」として注目を集めてきた。なかでも最近、カンボジアはベトナムに次いで熱い視線が注がれている。
 世界銀行によると、カンボジアのGDP成長率は2018年は6・9%に達し、19年は6・7%とほぼ同水準にとどまる見込みという。インフレ率は、IMFによると16年から18年までほぼ3%台を維持している。労賃はベトナムより安い。親日的であり投資環境も悪くない。
 電力事情もかなり改善されたようだ。4年前にベトナムとの国境の町、バベットを訪れた際に、縫製工場で10分に1回ほどの頻度で瞬間停電し、その都度ミシンが止まった。プノンペンでも夕食中に停電し、暗闇に包まれた市内を経験した。現在でもタイ・ベトナム国境周辺では両国から電力を買っているが、その供給量を増やしてもらったり、国内の発電所を増設したことで停電は減ったという。
 タイに近く、南部経済回廊も充実してきたこともあり、手作業で部品を作るような労働集約的工程をカンボジアで行い、最終組み立てをタイで行う―といった国際分業も進んできた。ミネベア、矢崎総業、住友電装、デンソー、日本電産などが進出しており、流通大手のイオンも2号店をオープンした。
 同国にとって日本は最大のODA(政府開発援助)供与国でもある。メコン川により分断され、川を渡るにはフェリーを利用するしかなかったネアックルン地区で、日本が支援した「つばさ橋」が15年に完成し、ベトナムのホーチミンまでのアクセスも格段に良くなった。
 今回の総選挙は与党勝利との予想が大半のようだ。いずれにしろ平穏裡に終えるよう望むとともに、強硬策ではなく対話の継続によって政治の安定化を図り、日本とカンボジアにとってウィンウィンの関係が続くことを期待したい。

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