近所のスーパーの敷地にはATMが2台設置してあるボックスがある。現金を引き出すのを手伝って欲しい。年老いた家人にそう頼まれ、狭いボックスに二人で入った。通帳とキャッシュカードを機械に入れる老人。いきなり4桁の暗証番号を大声で伝えてきた。隣のATMでは別の客が機械を操作している。全身が硬直した▼そのスーパーは最近、セミ・セルフと呼ばれるタイプのレジを導入した。バーコードの打ち込みとポイントカードの登録は店員が行う。そして、クレジットカードなどで代金を支払う場合、客は店員にカードを渡して決済してもらう。一方、現金払いの場合は客が自分で機械を操作して払う。スピードは上がったかも知れない。ただ、うまく操作できない高齢者も多く、店員の助けが必要となる▼現金大国と呼ばれるこの国も、キャッシュレス社会に向けて徐々に変わっていくだろう。ただし、機械の操作が苦手で、ITリテラシーの低い高齢者には今のところ手助けが必要だ。企業が本来目指す効率化、省人化もその分、先送りになることだろう。仕方がない▼久しぶりに外でお昼が食べたい、と老人。年金が入ったのでご馳走してくれると言う。和食系ファミリーレストランの割引券もあるから、と促された。暗証番号のことで小言をいう機会を失ってしまった。(19・8・28)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る