化学遺産に認定され、未来技術遺産にも登録されたのが「人造石油」を製造する技術であるフィッシャー・トロプシュ法(FT法)に関する資料。一酸化炭素(CO)と水素の混合ガスを触媒によって反応させ炭化水素を合成する手法で、日本では戦時下、石油由来燃料を代替する技術として研究開発が進められた▼FT法はもともとドイツで開発された技術で、当初はコバルト系触媒を使っていた。京都大学の研究陣は希少資源のコバルトを使わない鉄系触媒の開発に成功。生産拠点である北海道人造石油(滝川市)での試運転でもコバルト系を上回る収率が得られた▼量産に移行する前に終戦を迎え、その後も日の目を見ることはなかったFT法だが、ここにきて二酸化炭素(CO2)を原料としてカーボンニュートラルな「液体合成燃料」を製造する技術として注目されている▼CO2をCOに転換する逆シフト反応は600度C以上の高温に耐える触媒の開発が必要。実用化が期待されているのはCO2を低温下でCOに還元するCO2電解などの革新的技術だ▼再生エネ由来水素の確保を含めて課題は多いが、既存の化石燃料をそのまま代替可能なため新たな社会インフラを構築する必要がないのが大きな魅力。化学・石油業界にとってはチャレンジしがいのあるテーマだろう。(22・5・20)

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