欧州には、サステナビリティ(持続可能性)を経営の基軸とする化学企業が多い。持続可能性の追求が、自社の将来を切り開くことにつながるのはもちろん、それが人々の生活や社会の将来を真に支える企業として認められるために不可欠との認識が背景にある。
 新たな戦略を発表したBASFは、その一社だ。事業ポートフォリオの再編、組織のスリム化、特別項目控除前のEBITDA(金利・税・減価償却費計上前利益)を年率3~5%伸ばすといった目標を掲げた。これに加え「サステナビリティに大きく貢献する製品による売上高を2025年には220億ユーロにする」「30年まで温室効果ガスの排出量を18年のレベルにとどめる」とした。
 同社は生産体制を強化するための投資を続けている。中国では大型プロジェクトに乗り出しており、約100億ドルを投じて同国南部の広東省に「フェアブント(統合生産拠点)」を独資で建設する検討を進めている。エチレン年産100万トン規模のスチームクラッカーを軸に、誘導品として樹脂やスペシャリティ品などを生産する。30年までにコンプレックス全体を完成させる計画だ。
 この大型プロジェクトを具体化しても「温室効果ガスの排出量を増やさない」との意志を示している。マーティン・ブルーダーミュラー会長が「すでにプラントの技術水準が非常に高いことを考えると非常に野心的な目標であり、これまでと違う方法をとるには並外れた創造性が必要となる」と語るように、自ら高いハードルを設けた。
 温室効果ガスの代表格である二酸化炭素(CO2)を原料にして化学品を生産する取り組みも多彩だ。コベストロは、触媒を中核技術にしてポリエーテルポリオールを生産する技術の開発に08年からRWTHアーヘン工科大学と取り組み、年5000トンの設備を独ドルマーゲンに建設。マットレスや家具用などの軟質ウレタンフォーム向けに供給する体制を整え「cardyon」の商品名で供給を始めている。
 アクゾ ノーベルのスペシャリティケミカル事業を母体にして発足したヌーリオンは、蘭フォタノール社とともに光合成を行う細菌を用いて有機酸などの生産を始めた。シアノバクテリアが光合成の過程でCO2を取り込み、効率の良い有機酸などを生産につなげていく。
 一連の取り組みは化学の秘めた力を示している。より持続可能な未来に貢献する成果を生むことこそ企業の価値、また産業としての存在価値向上への道ではないか。

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