白血球や赤血球を生み出す造血幹細胞をポリビニルアルコール(PVA)を用いて大量培養することに、東京大学と米スタンフォード大学などの研究チームがマウスで成功した。白血病などの画期的な治療法につながる可能性が示されたわけで、将来的なヒトへの応用に期待がかかる▼成果に対する反響が大きかったのは、PVAが洗濯のりや液体のりの主成分であり、身近に存在するからだ。造血幹細胞を増殖させる培養液にはウシの血清成分など高価なものが使われているが、安価に手に入る液体のりの成分が利用できるとあれば、血液疾患に関わる研究が加速するだろう▼PVAは親水性、造膜性、接着性、耐溶剤性などに優れ、錠剤のコーティングやバインダーなど医薬用途にも使われてきた。液体のりの代表格ともいえる製品のメーカーは、この研究に同社製品が使われたことを認めるとともに、「使用目的は異なるが、社会貢献の一助になれることは大変喜ばしい限り」とコメントした▼医療分野に利用される化学品は多いが、ほとんどはその用途向けグレードなどメーカー側の開発努力の賜だ。今回は培養液の成分などをしらみつぶしに検討し、PVAにたどり着いた。また一つ、最先端医療の研究に化学品が貢献できる可能性が見出されたことに、素直に喜ばずにはいられない。(19・6・13)

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