大手化学企業が相次ぎトップ人事を発表している。次の経営計画実行を新しいリーダーに託すという共通項はあるが、新型コロナウイルスの感染拡大にとどまらず、米中対立激化によるサプライチェーンの変更や、気候変動をはじめとする環境意識の世界的高まり、人工知能(AI)などデジタル技術の急速な進展と、ここ数年の間に取り巻く事業環境は大きく変化し、化学企業の存在意義や価値そのものが問われ始めている。不確実性が高まり先が読めないなか、新リーダーは足元の経営安定化を図りつつ、価値や長期目標を見定め、資源配分を可能な限り最適化し、さらなる成長に向けて実行が求められる。
 異例のトップ人事に踏み切ったのが三菱ケミカルホールディングス。社外からベルギー出身のジョンマーク・ギルソン氏を招へい、来年4月1日付で社長に就く。従来の社内からの昇格人事に縛られることなく、ギルソン氏を選んだ。その理由について指名委員会の委員長を務める橋本孝之社外取締役は「社内より社外、日本人より、しがらみのない外国人を考えた。ポストコロナをにらみ、総合化学の延長ではなく、ライフサイエンス・ヘルスケアと機能化学を融合させた新しいビジョンや知見があるかを重要視した」と強調した。道半ばである機能化学の収益力向上には大胆な構造改革が求められる。しがらみのない外国人社長に託す格好だ。
 AGCは来年1月1日付で最高技術責任者(CTO)の平井良典代表取締役専務執行役員が社長に昇格する。収益の柱として電子材料と化学品を育ててディスプレイ一本足を脱し、戦略事業としてモビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスを伸ばした島村琢哉社長は、継続する課題として「資本利益率(ROC)の改善が必要な事業があり、さらなる変革が必要。もう一つはサステナビリティの取り組みと方針を、どう打ち出すか」を挙げた。新事業の探索と育成に尽力してきた平井専務は「成長事業を伸ばし、新しい事業を創造する両利きの経営に磨きをかける。コア事業はあるべき姿を定め、構造改革を含め策を練る」と意欲を示した。
 クラレも、来年1月1日付で川原仁取締役常務執行役員が社長に昇格。伊藤正明社長はビニルアセテート、イソプレン、活性炭の3本柱を作り上げたが、川原新社長は「第4、できれば第5の新事業創出が使命」と語る。2026年に100周年を迎える老舗企業だが、高い利益率は競合他社も羨む。ニッチ市場で高いシェアを握り、世界市場で、さらに存在感を高められるか注目される。

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