経済産業省が産業保安分野の協力をアジア各国に対して広げている。6月にタイ政府と協力覚書(MOC)を締結したのに続き、11月に入って中国でも保安セミナーを開催した。新興国では化学プラントの事故も少なくなく、産業保安に対する関心が高まりつつある。高圧ガス保安法など法規制のノウハウに加え、デジタル技術を活用した保安技術に対する期待も高い。国情の違いはあっても丁寧に対応することで日本に対する信頼が高まり、インフラシステム輸出の拡大にもつながるだろう。
 中国では3年前に天津の化学工場が大爆発を起こしたが、未公表の事故も、かなりの数とされる。当局も危機感を強め、それまで縦割り行政のために分かれていた安全、危機管理、自然災害、消防などの組織を統合し、今年3月に応急管理部(日本の省に相当)を新設した。
 11月12日に北京で開催された「スマート保安日中セミナー」(新エネルギー・産業技術総合開発機構北京事務所主催)は、両国の産業保安の課題と、その解決策を事例を通して共有することを目的としたもの。日本から経産省保安課、保安力向上センター、山九、日揮、アズビルが、中国側は中石化燕山石化、中国化学品安全協会などがプレゼンテーションを行った。
 参加した経産省の後藤雄三保安課長は「中国は安全文化を根付かせることに真剣に取り組み始めていると感じた」と語っており、今後も応急管理部をカウンターパートとして交流を重ねたいとしている。
 タイとは、MOCに基づき9月にセミナーを開催するなど協力を深めている。日本からはエンジニアリング、計装、電力などの企業のほか高圧ガス保安協会が、タイからも政府関係者のほかPTT、サイアムグループなどが参加した。タイは産業振興策「タイランド4・0」を推進しており、日本のデジタル技術を活用して産業の高度化、高付加価値化につなげたいという狙いがある。保安に関する法規制も十分に整備されておらず、日本の認定事業所制度などに関心を示している。
 日本では産業プラントの高経年化、労働人口の減少にともなう熟練作業者の減少を背景に、保安のスマート化に向けた取り組みが加速している。日本に続いて中国、アジア諸国でも、これらの問題が深刻化するのは確実で、日本の知見が生かせる分野といえる。原子力発電所、交通システムなどのインフラシステム輸出では、中国の価格攻勢で日本は苦戦しているが、保安ノウハウをセットにしたインフラシステムは日本の独擅場といってよいだろう。

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