旭化成は八月一日付で新事業創出力強化のため研究開発本部、知的財産部、技術戦略・開発室の機能を統合した新事業本部の新設をはじめとした機構改革を実施した。その一環としてリチウムイオン二次電池(LiB)の基本特許開発者である吉野彰グループフェローの名前を冠した吉野研究室を設置し、蓄電デバイスにおける新規事業創出に向け動き出した。吉野氏に今後の研究開発の方向性や蓄電デバイスの見通しについて聞いた。
 - 研究室ができて一カ月余りがたちました。
 「まだ旭化成エレクトロニクスの電池材料事業開発室にいた三人が移ったばかりという状況だが、今月中にもグループ関連部署からの人材補強を含め研究開発体制を固めるつもりだ。また、新事業本部は事業と事業のすき間を埋めるとともに、新しいテリトリーの事業を立ち上げることもミッションの一つと考えている」
 - 研究開発のテーマや切り口は。
 「テーマはやはり蓄電デバイスだ。蓄電デバイスにはIT関連の小型民生機器など一-二時間単位で充放電する市場、これから立ち上がる十時間程度かけて充放電するエネルギー貯蔵関連の市場、そして充放電時間一-二分程度のハイブリッド電気自動車(HEV)向け市場と、大きく三つの市場がある。この三つを押さえればさまざまなビジネスチャンスが出てくる。これまで以上に出口を意識した研究開発が重要だ」
 「かつて二次電池はメーカー各社が独自の材料を使いオリジナリティーのあるビジネスを展開していたが、研究開発が進みいまや性能面では差がつき難くなっており、今後は別の切り口が必要だ。コンビニなどに設置した充電ステーションでいつでも手軽に充電できる仕組みを作ることも考えられる。こうした用途には十分で五〇%充電できるような充電しやすい蓄電デバイスの開発が求められる」
 - 旭化成を含め複数の企業が次世代キャパシターを開発しています。
 「LiC(リチウムイオンキャパシター)という分かりやすい呼び名もついて、さまざまな企業が開発している。電圧が四・二ボルト前後で自動車用途を狙っていることなどは共通だが、ポイントは耐久性。われわれが開発中のLiCはその点だいぶ改良が進んでいる。またLiCで培った技術は旭化成ケミカルズの事業にも応用できるという利点もありそうだ」
 - さらに次の世代の蓄電デバイスのイメージは。
 「LiB、LiCの次に来るのはLiD。リチウムイオンデバイスという意味だが、電解液中のリチウムイオンが行き来する絶対量が少ないことが特徴で、リチウムイオンの移動するスピードが速い正極材を開発する必要がある。十年後の二〇一五年ごろにはHEV用の電源はLiDが主力になっているだろう」
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 <吉野彰氏=よしの・あきら>72年(昭和47年)京都大学大学院工学研究科石油化学専攻修士課程修了、旭化成入社後、旭ダウ研究部配属。81年から導電性高分子ポリアセチレンの研究に端を発し新型二次電池の開発に着手、85年に正極にコバルト酸リチウム、負極に炭素材料を用いる現在のLiBを世界で初めて見いだす。その後商品化・事業化を進め、東芝との合弁会社A・Tバッテリー設立に携わり92年に事業をスタートさせた。LiBに関し基本特許を含め百以上の特許を取得、その業績が国内外のさまざまな団体に表彰されている。
 

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