東南アジアで国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた施策が相次ぎ打ち出されている。シンガポール政府は今年、新たな環境政策で3R活動強化やリサイクル設備投資拡大の方針を発表した。産業廃棄物処理にも影響を及ぼすとみられる。インドネシアでは政府と国営企業が持続可能な開発に向けた基金を設けたり、ごみ焼却発電の拡大が検討されている。同発電技術は日本企業に一日の長があり、事業機会が見込める。
 市民生活にも多くの変化がみられる。ここ数年の間にシンガポールやジャカルタ、クアラルンプールなどの大都市では分別用のごみ箱が増えた。レジ袋を配布しない日を設けたり、自前バッグを持参した客にポイントを付与したりするスーパーマーケットもある。
 SDGsは、環境保全だけでなく、社会・経済を含めた持続的な発展を目指す目標だ。域内でも、地元ファストフード店や高級ホテルが使い捨てストローの使用を取りやめるなどの動きがあるが、使い捨てプラ問題もSDGsの文脈で捉えるべきだろう。つまり単に素材をバイオプラや再生材に転換するだけでなく、政府は市民の意識や社会経済活動のあり方全体を変えていくことが重要だ。
 欧州では買い物バッグなどに生分解性樹脂を使うケースが多いが、これは多くの家庭に有機物を分解して堆肥化するコンポスターがあるからこそ可能になる。人々の生活を便利にする樹脂素材そのものが問題ではないだろう。東南アジアの経済成長の陰で置き去りにされた、ごみ処理やリサイクルなどに関する社会インフラの整備も産業界と一体で進める必要がある。
 こうしたインフラ整備や社会改革には長い時間を要する。先進国と新興国との間に横たわる意識の溝も、いぜん大きい。今年8月にクアラルンプールで開催されたアジア石油化学工業会議。各国工業協会による会合では環境負荷低減を重視することで合意したものの、機能包装による食品ロス削減を訴える日本などに対し、新興国の中には、これを「過剰包装」と退ける向きもあった。一方、タイでは政治的な思惑も絡み、化学物質の排出基準を不必要に厳格化しようとする動きもある。
 東南アジアは、日系化学企業にとって重要な生産拠点であり市場でもある。域内諸国のSDGs達成への取り組みに応え、日本の化学産業が重要な役割を果たせることを証明し、正しい情報を提供する必要がある。近年規模拡大が目立つローカル化学大手も環境技術には十分な蓄積がない。日本企業がこれを支援する余地は大きい。

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