株主と経営者の関係は、いかにあるべきか、どのように変わったかについて、それぞれの立場から話を聞く機会が続いた。その話から、企業が成長し、その価値を高めるために何が必要かを考え続けている。
 話を聞いた一人がベルギー・ソルベイ社の取締役会メンバーであるジャン-マリー・ソルベイ氏。ソルベイ社は、1863年にアーネストとアルフレッドのソルベイ兄弟を含む少数の親族が創業。ジャン-マリー・ソルベイ氏はソルベイ家5代目当主で、同家株主2500人の代表も務める。ソルベイ家は今もソルベイ社の最大株主で、同家を中心とする人たちが約25%の株式を持つ。ソルベイ氏は、その利点として「安定した株主がいるがゆえに長期的視点で経営にあたれる」ことに加え「経営陣とソルベイ家が同じ方向を向き、価値観を共有していれば、安定した経営の執行が可能になる」ことを強調した。
 ファミリーカンパニーは、少なからず同じ利点を享受している。それは創業350年の独メルクにも言える。カイ・ベックマン経営執行委員会委員・パフォーマンスマテリアルズCEO(最高経営責任者)は「主要株主はメルクファミリーであり、これが当社の安定をもたらしている」と語る。同時に「変化する力と歴史的に安定した株主の組み合わせ」が、これまでの成功の要因とも述べている。
 ただ安定した株主が増えると経営の規律が失われる懸念がある-と主張する人たちがいることも事実だ。安定した株主と経営首脳は、常に互いに律することが求められるのであろう。
 投資家の意向が企業経営に影響することがある。ダウ・ケミカルとデュポンの対等経営統合によって誕生したダウ・デュポンの素材科学事業を引き継ぎ、2019年第1四半期に発足する予定の「ダウ」。同社CEOに就任するジェームズ・R・フィッタリング氏は「企業業績に対する現在の投資家の見方は、20~30年前とはかなり異なっている」としたうえで「投資家は今、特定の領域に、よりフォーカスした取り組みを企業に求めている」と語った。ダウ・デュポンの発足と3つのリーディングカンパニーの発足も、それが背景になっている。
 一方で投資家の意向が経営計画を覆す例も少なくない。投資家と経営首脳の利害が異なる場合もあり、時により「投資家=安定株主」ではない。将来を自由闊達に議論することは重要だが、ステークホルダーの一部である株主と経営者の志向に大きな違いが生まれることは、すべてのステークホルダーにとって良いことではない。

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