ガラスを代替する樹脂グレージングは、ポリカーボネート(PC)の特性から、ガラスに比べて耐衝撃性や断熱性に優れるほか、重量が約半分と軽い。また射出成形できることから形状自由度が高く、複数部材の一体成形が可能。車両デザインや生産性の向上に寄与する。
 ただPCは、柔らかく傷が付きやすい、紫外線で劣化する、ガラスに比べて高コスト―といった課題がある。しかし表面硬度に関しては、すでに実用性能のハードコードや高硬度化技術が開発されている。また機能の複合化として、コーティング技術による赤外線遮蔽機能や光触媒を応用した防汚・防曇・結露防止、ナノインプリント技術による防曇・反射防止機能なども実現済み。
 PC素材自身も、成形性や耐衝撃性といった基本特性とともに、ガラス代替としては可視光透過率や透過歪み、色相といった高い次元での透明性に加え、周辺部材(黒枠材)向けにPCアロイとエラストマー・無機フィラーといった強化材の配合技術をベースに、収縮特性や滞留熱安定性といった要求特性を満たす材料が開発されている。
 こうした技術開発を背景に、すでに1・6平方メートルのパノラマルーフが製品化されるなど実用の域に達している樹脂グレージングだが、フロントおよびリアガラスを代替するにはいたっていない。その最大の理由が製品スペック。半永久的なガラスに対してPCは紫外線吸収による劣化が避けられず、自動車メーカーが量産車向けのスペックを決め切れずにいることが普及拡大の大きな壁となっている。
 こうした状況下、電気自動車(EV)メーカーのGLMが帝人と共同開発する樹脂製フロントウインドーの搭載車の発売を発表。今年7月に「道路運送車両の保安基準」を満たす国内認証を取りナンバープレートも取得した。スポーツEV「トミーライカZZ」の車体をベースに年内には受注生産体制を整え、来年春に販売を始める計画だ。フロントウインドー用に縦約700ミリメートル、横約1300ミリメートルの曲面を持つ一枚板として射出プレス成形した製品は、十分な強度確保によってAピラーを無くすことで視認性を大幅に高められるのが魅力。窓重量も従来のガラス窓とAピラーの組み合わせに対し36%軽量化できる。
 ブランドや生産規模といった制約から既存の自動車メーカーが超えられない壁を、新興メーカーがその身軽さから乗り越えていく。GLMの量産車がモデルケースとなり、樹脂グレージングのフロントおよびリアウインドーへの適用が広がっていくことが期待される。

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