日中関係が正常な軌道に戻りつつある。尖閣諸島を巡る対立などを抱えつつも、この間、経済面で地道な対話を絶やさなかった努力の成果だ。関係改善の背景には米中貿易摩擦などを巡る打算があるのも明らかだが、これを機に首脳の往来を定着させるなど政治面での関係安定化につなげたいものだ。
 安倍晋三首相は26日、北京の釣魚台迎賓館で習近平国家主席と会談した。日本の首相による中国の公式訪問は7年ぶり。首相は「競争から協調」「パートナーであり、互いに脅威とならない」「自由で公正な貿易関係の発展」の3原則を提示し、関係強化に意欲を見せた。習主席は「中日関係は曲折を経て正しい軌道に戻りつつある」と応え「歴史的に新たな方向に発展させなければ」と述べた。会談で中国側は友好ムードの演出にも努めた。当日、天安門広場では中国国旗と並んで日の丸が掲げられ、安倍首相を歓迎する礼砲が打たれた。地元メディアも好意的な報道を重ねた。
 米国との貿易摩擦の長期化が予想されている中国には、先端技術などを巡って日本を取り込もうという狙いがある。安倍首相も日中関係の改善を外交的な成果としてアピールして政権浮揚につなげたい考えで、双方の利害は一致する。
 関係の強化は、やはり経済分野から進む。日中両政府による「第三国市場協力フォーラム」では企業や政府機関関係者1400人が参加し、52件の協力に関する覚書を締結した。実現性に疑問があるものもあるが、第三国の発展に貢献しながら一つでも多くのプロジェクトが成功することを期待したい。
 また今回の会談を通じ、中央銀行間で円と人民元を融通し合う通貨交換(スワップ)協定の5年ぶり再開や、日中と東南アジア諸国連合(ASEAN)などが協議中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期妥結、日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉加速で一致するなどの成果も得られた。
 他方、政治面では課題が山積している。会談で安倍首相は尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入などに改めて懸念を表明し、東シナ海ガス田開発に関する条約交渉の再開を求めたが、具体的な進展はなかった。歴史認識についても、いぜん隔たりがある。中国における知的財産権の問題についても、日本は具体的な改善を求める必要がある。
 両首脳は競争から協調へと新たな関係を築いていくことを確認した。まず首脳の往来を定着させ、対話のパイプを太くすることが肝要だ。信頼関係を深めながら課題解決の糸口を見つけることが求められる。

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