米国の動物愛護団体が先日、日本の大手食品・飲料メーカー9社が動物実験の廃止を決定したと発表した。安全性などに関する法規制の範囲外の実験を止めるということだが、動物実験廃止は世界的な流れ。2013年に欧州で化粧品開発における動物実験が禁止されたことなどを背景に、化学物質の安全性評価についてもパラダイムシフトが起きている。動物実験を代替可能な信頼性の高い毒性予測技術が求められている。
 化学物質の毒性評価は歴史的に動物を用いて行われてきた。動物実験は高額の費用や時間がかかる。また動物愛護の観点からも動物実験の削減が必要になっている。欧米を中心に細胞を用いたインビトロ試験など代替手法の開発が進むが、近年注目されているのがコンピューターによる毒性予測だ。
 その一つが経済産業省が昨年度から開発に取り組んでいる次世代型安全性予測手法「AI-SHIPS」。最新の毒性学の成果などから得られた毒性関連ビッグデータと、機械学習など最先端のAI(人工知能)技術を活用し、化学物質の構造を入力することで毒性の有無を高精度に予測するシステムで、まず肝毒性の予測システムを18年度中に構築する計画。
 毒性予測プログラムはすでに存在するが、AI-SHIPSの最大の特徴は、体内での毒性発現メカニズムに基づいて予測を行うこと。化学物質と毒性の関係をブラックボックス的に結びつけた従来型の予測モデルは毒性がどうして発現するかが分からず、予測結果の信頼性が問題視されていた。
 信頼性の高い予測モデルとするため、薬物動態や細胞内反応など各研究分野の第一人者が実験データの収集や解析を進めている。精度の高さだけでなく、毒性発現という現象の理解にも役立つ世界の一歩先を行く予測システムで、肝毒性のモデルをベースに、プロジェクトが完了する21年度までに血液毒性、腎毒性の予測システムも作る。
 動物実験が不要になれば、安全性評価にかかる期間・費用もほぼゼロにできる。ただ、これを実現するには、各企業が独自に持つデータを使い自社のシステムとしてカスタマイズしていくとともに、動物実験を置き換えられるよう、各社のデータを活用して予測精度をさらに高める必要もあるという。
 何より重要なのは、企業が利用しやすい環境やツールを整備すること。動物実験を求める化審法の運用見直しも考えなければならないが、それには時間がかかる。まず法規制における予測手法の位置付けを明確化する必要がありそうだ。

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