水素エネルギー社会実現に向け、海外からの水素の大量輸送技術の実証事業が相次いで動きを速めている。川崎重工業などによる液化水素の輸送事業は、今年4月に豪州政府の資金援助が決定し、同国ビクトリア州で液化設備などの建設に入る。千代田化工建設などによるメチルシクロヘキサン(MCH)輸送事業も、7月にブルネイで水素化設備、10月には受け入れる東亜石油・京浜製油所で脱水素設備の建設に着手した。もう一つの有力な水素キャリアであるアンモニアについても、グリーンアンモニアコンソーシアムが中東、米国で事業化調査に入っている。水素エネルギーの実用化には安価な水素を大量に供給することが不可欠。実証事業の成功に期待したい。
 政府はパリ協定を踏まえて、2050年までに温室効果ガスを80%削減する目標を掲げている。再生可能エネルギーの大量導入に貢献する水素エネルギーは、その実現に欠かせない技術の一つだ。17年12月に策定された「水素基本戦略」では、国際的な水素サプライチェーン(SC)を開発するとし、各水素キャリアについて25~30年ごろの商用化を想定して実証事業を進めるとしている。
 液化水素SC実証では、豪州の未利用褐炭由来の水素を液化し、専用船で神戸市空港島に建設する受入基地に輸送する。専用船、受入基地は設計に入っており、豪州に建設するガス精製設備、液化設備、積荷基地についても19年に着工の運びだ。
 MCHのSC実証では、ブルネイでトルエンを水添してMCHを製造し、輸送先の川崎でMCHから水素を取り出し、脱水素して東亜石油・京浜製油所で発電燃料に用いる。ケミカルタンカーなど既存インフラを活用できるのが利点。19年7月にブルネイ、川崎のプラントが完成し、輸送を始める予定だ。
 第3のキャリアであるアンモニアは、実証の具体化で後れを取っているが、既存インフラを活用できるのが強み。産ガス国でアンモニアを生産し、日本に輸送する事業の検討に入った。CO2回収・貯留(CCS)と組み合わせてCO2フリーを実現。そのまま発電燃料に用いることができる。グリーンアンモニアコンソーシアムの村木茂議長は「CCSコストを織り込んでも水素コスト20円/立方メートルは可能」と見ており、カーボンプライシング(炭素価格付け)が導入されれば石炭火力並みの発電コストになるという。
 水素エネルギーに各国の関心が高まっているが、大量輸送技術で日本は先頭を行く。エネルギー安全保障にも資するものであり着実に前進させてほしい。

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