日本化学工業協会が、化学物質安全に関する研究活動「LRI」で来期(2019年度)に新規採択する研究課題の募集を開始した。社会および化学業界のニーズを踏まえて7つの研究テーマを設定したが、うち1つが海洋プラスチック問題の中でも、とくに注目度の高いマイクロプラスチック(MP)に関する研究。国際的に見ても、まだまだ研究データが少ないとあって2期連続の募集となった。
 国際化学工業協会協議会(ICCA)の活動として日米欧の化学業界が取り組むLRIは、化学物質が人の健康や環境に及ぼす影響に関する研究を長期的に支援する研究助成制度。日化協は2000年に本格的に始めた。社会ニーズへの対応、業界が抱える課題解決を主眼に研究テーマを募集しており、今期は5つテーマで募集を行った。この1つが「MPに吸着した化学物質の環境生物へのばく露またはリスクの評価」だ。
 MPは化学物質を吸着しやすいといわれ、海洋生物が餌と間違えて補食することで化学物質が体内に取り込まれて蓄積し、食物連鎖を通じ生態系全体に影響を及ぼすのではないかと懸念されている。ただMPを介して化学物質がどの程度蓄積されるのかなど不明な部分は多い。このため今期は、魚類への蓄積と生物間濃縮に関する愛媛大学の研究が採択されている。
 来期は、MPを介して化学物質の有害性がどう変化するかをテーマに研究課題を募集する。生物間濃縮に加え、有害性の視点からも研究を進めデータを収集・解析することで、MPの環境影響の程度を明確化して環境リスクを推測できるようにするのが狙いだ。
 LRIは日米欧がそれぞれ、各国・地域のニーズや課題を踏まえ個別に研究テーマを設定しているが、MPについては連携して取り組んでいくことが確認されており、欧州化学工業連盟もテーマの募集を始めている。日化協としても引き続き力を注ぐ考えで、今回の募集には入らなかったが、海洋プラを定量的に把握するためにも重要と考えられるMPの生成メカニズム解明を研究テーマとすることも検討している。
 化学産業は、生分解性プラやバイオマスプラなど、海洋プラ問題解決に役立つソリューションの提供に力を注いでいる。一方、世界中でMPを含む海洋プラの研究が活発だが、MPの生成メカニズムをはじめ未解明な点が多く、論文やデータも不足している。問題解決には科学的な知見の集積も必要であり、これも化学産業の重要な役割となる。LRIが、その先導役となることを期待したい。

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