9月末、東京で2018年度の「産業安全塾」が開講した。石油化学工業協会、日本化学工業協会、石油連盟が共催し、安全を理解できる将来の経営者や管理者、幅広い視野を持った安全の専門家を育成することを目的に14年度にスタート。5期目の今年度は、3団体会員企業の環境安全・保安担当者らを中心に29人が参加。来年2月まで全16回の講義を通じ、産業安全の現状、安全文化を考慮した現場力強化、安全教育などについて理解を深める。
 同塾の前身は「知の市場」の公開講座「産業安全論」。製造業で現場力低下が指摘されるなか「経営トップが本気で安全を推進していかないと企業の安全は確保できない」と考え、安全工学の第一人者である田村昌三東京大学名誉教授が石化協の協力を得て12年度に始めた。
 公開講座のため業種を限定せずに受講者を集めていたが、14年度に日化協、石連も運営に加わり、化学・石油産業における安全教育プログラムへと枠組みを変更。15年度には産業安全塾と改名した。また事業所の中核人材育成を主眼に、4年前から四日市で、3年前から岡山でも講座を行っている。
 産業安全の全体像を理解できるよう、ここ数年は産官学で講義を行っており、経済産業省、厚生労働省、消防庁も積極的に講師を派遣している。講義は討論が中心で、講義後に講師を含めた意見交換会も開く。会社の壁を越え、いろいろと相談できるのも塾の大きなメリット。討議や意見交換を通じて幅広い視野が養われるだけでなく、人脈づくりにも役立つという。
 田村名誉教授の勇退を受け、今年度から東京の講座は横浜国立大学の三宅淳巳教授が指導する。内容に大きな変更はないが三宅教授は産業安全を前に進めるには「マインド、熱意を持った人達がチームとなり、産業界全体をリードしていくことが必要」と説く。実際に毎年約30人が集る同塾は、こうしたチームを作り育てる場。人材育成だけでなく、会社の枠を越えたつながりもできると業界の評価は高い。最近は修了者によるOB会もでき、OB会同士の交流も始まっているという。
 現在、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した予兆管理など新技術の導入が進んでいるが、産業安全の基盤が「人」であることに変わりはない。設備の老朽化や熟練者の退職などに加え、近年は自然災害の激甚化など新たな課題も浮上するなか、総合的かつ多面的な視点で安全対策に取り組める人材の重要性が、さらに増す。産業安全塾のさらなる発展を期待したい。

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