あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」。この言葉が新聞・テレビなどに溢れかえっている。なぜか。現状は期待値が先行している嫌いがあるものの、IoTには、これまでの社会の在り方そのものを変える可能性があるからだ。
 IoTは個人の嗜好に関わらず、着実に世界中に浸透している。調査会社フロスト&サリバン(F&S)によると、2020年までに世界で800億台のデバイスやセンサーがインターネットにつながるという。その数、地球上の人間1人当たりデバイス10台となる。
 F&SではIoTを「センサー、デバイス、人、インフラ、プロセスからデータを収集し、そのデータを高度な分析で実践的な行動に変換する、デジタルトランスフォーメーションの原動力」と定義する。つまり人依存のアナログ業務から、データを中心とした業務に移行するための要といえる。現在、製品の開発速度、経営の意思決定などで、これまでにないスピード感が問われている。あらゆるモノから得られるデータの「使いこなし」なくしては企業の存続さえも危うくなる。
 ただユーザーとしてIoTを享受するだけではビジネス面で大きな損失だ。運用面で、あらゆる方式が可能なシステムだからこそ、異業種間のコラボレーションを進め、このIoT需要を取り込むべきだろう。
 「トイレのIoT化」が顕著な例として挙げられる。離れた場所からトイレ個室の空き情報を確認できればユーザーの利便性が高まるほか、清掃の効率化につながる。旭硝子はガラス面を液晶ディスプレイにする技術を用い、丸井グループと実証実験を展開中。東芝デジタルソリューションズは三井不動産と共同で、トイレのドアや通路マットに設置したセンサーから混雑情報の取得を検証する。ロームは無線通信デバイスを金物メーカーに提供。トイレ施錠の有無で個室の使用状況を確認するシステムを確立している。
 このようにセンシング一つをとっても多様なやり方がある。同時に、さまざまな電源の供給方式も考えられるが、メンテナンスを考えればエネルギーハーベスト(環境発電)を用いた自家消費型が理想だろう。ロームの無線通信デバイスは、施錠・解錠の一瞬の動きで発電が可能だ。またフジクラは色素増感電池を電源とした無線センサーシステムを訴求している。
 身の回りにあるモノや空間のIoT化が成長の源泉になる可能性を秘めている。人々の日常生活を支えてきた化学メーカーだからこそ、IoT需要を積極的に開拓してもらいたい。

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