波平が大事にしている盆栽にカツオがいたずらし、お決まりの怒鳴り声で叱られる。盆栽といえば、テレビアニメのサザエさんのシーンが思い浮かぶ。だが、今時の一般家庭ではなかなかお目にかかれない。ついに波平の年齢を超えてしまったものの、日本の侘び寂びの心ではかなわない▼盆栽を世界へ広めようと、1人の日本人が立ち上がった。1958年、当時37歳だった故・吉村酉二氏は、盆栽や道具などをケースに詰め込み、単身ニューヨークに降り立った。盆栽に興味を持つ外国人との出会いを通じ、米国立盆栽・盆景園の開設に影響を与えた。夢が叶った吉村氏は、後に”アメリカ盆栽の父”と称された▼関東大震災被災後に東京・本郷周辺の盆栽業者達が盆栽づくりに適した土地や空気、水を求めて集まったのが、さいたま市の大宮盆栽村。ここにある世界初の公立盆栽美術館では開館10周年記念、米盆栽・盆景園との姉妹館提携記念秋季特別展として、「海を越えた盆栽家」と題し吉村氏の生涯に焦点を当てた催しが開かれている▼戦後の日本と密接な関係を持つ米国を舞台に、盆栽の国際化に貢献した信念には頭が下がる。そう考えれば、文化の近い近隣諸国なら交流もスムーズにいくと思うのだが。形を整えて、風通しを良くするための、うまい剪定道具はないものか。(19・11・7)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る