昔の話だが、知らない人に会うために電話帳を活用していた。千代田区、港区、中央区など東京23区ごとに分かれた電話帳だ▼そこには各企業のあらゆる部署の電話番号がグループ単位でズラズラと載っていた。ポリオレフィンG、機能樹脂G、フェノールG、スチレンG……。電話をすれば、初めての電話で名前も顔も知らない人であっても、大抵は出てくれる。電話を切って1時間後には名刺交換、ということも希ではなかった▼電話帳の活用術は、実は営業マンから教わったテクニックだ。総合商社の営業部署に取材したいと考え、どうやってコンタクトすべきか悩んでいた。するとその営業マンは簡単だよ、見ておけと言う。そして電話帳をたぐるとあっという間にアポイントを取ってしまう。その手際に驚いた。グループリーダーの方はいらっしゃいますか。そう聞くのがコツだと教えてくれた▼今や分厚い電話帳のページをたぐり、見つけ出した番号に赤線を引くなどという経験はすっかり無くなった。通話のほとんどはスマートフォンのリストに名前がある人だ。そうでない場合は、ネットの検索エンジンか名刺検索ツールで電話番号を探す▼誰でも会う前は知らない。知らない人にどんどん会うことはどんな仕事でも重要だ。便利なようで不便な世の中になった。(19・11・5)

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