「大学による産学連携機能を充実させ、強化するには、どのような方策が必要なのか」-。この課題に対する文部科学省の検討会の議論の結果がまとまった。研究成果の活用につながる技術移転機能の最適化を図り、産業界にイノベーションを引き起すことが狙いだ。日本の大学には優秀な研究者が多いが、素晴らしい研究成果を挙げても産業利用に結びつかないケースが多い。まとまった方策をベースに大学同士が協力し、異なる分野の知的財産を組み合わせるなど、産業創出可能な「知財の付加価値化」に戦略的に取り組む姿を見せてほしい。
 検討会議論のまとめでは、ライセンス収入が1億円以上の機関がある一方、知財収入の確保がほとんどできていない地方の国公立大学もあると指摘している。また最適化が図れない組織へのアドバイスとして、単独特許出願の確保やイノベーションマネジメントハブ(仮称)の形成、知財移転のための実施体制の構築などが重要であると要点を示した。
 特許出願のあり方をみると、技術移転の成功例が多い米国では大半が単願だという。ライセンスや事業実施許諾権の約63%が中小・ベンチャー企業によって活用されている。ビジネスとして成長するまでをたどると、中小・ベンチャーが研究成果からビジネスモデルを創出し、大企業との提携や買収でポートフォリオが補完され、大きなビジネスへと発展させる-といったパターンが目立つ。これに対して日本の大学は共願が多く、単願も合わせ65%ほどが大企業に渡る。事業化されないケースが多々あり、地域産業創出にもあまり効果が出ていない。
 欧米で大学発の知財が産業化され、ビジネスとして成功する例が多い背景には、地域の大学連携機関が大きな役割を果たしている点が挙げられる。バイオテクノロジーやエレクトロニクスなど、先端分野ごとに綿密な研究開発戦略と事業化計画を立て、地域研究開発の司令塔として機能している。ここが日本の国公立大学と大きく異なる点である。日本には研究成果が産業利用できると見抜ける目利き人材が不足していることに加え、成果に対するベンチャーキャピタルの注目度も低い。
 しかし大学を受け身の指導教育から、研究者、学生が自ら学び取る環境へと変えることにより、ビジネス感覚と研究の有用性が分かる目利きは育つかも知れない。また知財取引の専門家の不足は、民間と協力して組織的な仕組みを作れば道は開けるだろう。優れた研究成果が埋もれぬよう、大学には、より積極的に活動してもらいたい。

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