貿易摩擦の解消に向けて米中両政府はこのほど、北京で次官級貿易協議を開いた。直接交渉は昨年12月の首脳会談以降初めてで、中国経済の構造改革や両国の貿易不均衡の改善策を探ったとみられる。両経済大国の衝突が世界経済に暗い影を落としていることを認識し、対立回避の道筋を早期に示してもらいたい。まずは輸入拡大など歩み寄りやすい分野で協議を深め、知財侵害など構造的課題については長期的視点で話し合うのが現実的な流れだろう。
 次官級協議は米国から通商代表部(USTR)のゲリッシュ次席代表、中国から商務部の王受文次官が参加した。現地メディアによると、中国の劉鶴副首相が米代表団を出迎えるなど、事態の打開に向けた中国側の積極姿勢が目立ったという。
 USTRは、農業やエネルギー、製造業、サービスの分野で中国が輸入を大幅に増やすとの誓約を中心に議論したとの声明を発表。中国側は、米国による追加関税の税率引き上げ猶予期限が3月初めに迫るなか、交渉期限をにらみ、貿易不均衡の是正や知的財産権の保護などに向けた改善策を示した模様だ。
 具体的な合意の有無などは明らかにされていないが、協議は予定を1日延長して終了しており、中国による米国からの輸入拡大などで議論が深まったとみられている。もっとも、知財侵害や産業振興策「中国製造2025」の見直しなど、構造的な問題についてはいぜん対立が深く、今後開く閣僚級以上の会談に委ねられるようだ。
 トランプ大統領は、これまで中国に課した制裁関税2500億ドルのうち、2000億ドル分の関税率を今月以降、10%から25%に引き上げる予定だったが、昨年12月1日のブエノスアイレスでの会談で90日間猶予することで合意。知財保護やサイバー攻撃などの問題を話し合い、解決策が見出せなければ関税を引き上げるとした。
 中国は、貿易不均衡是正のため農産品やエネルギー、工業製品などの輸入を拡大するとし、米国からの輸入車に対する報復関税についても今月から3カ月間の停止を決めた。また国有企業が米国産大豆を購入するなど一定の譲歩姿勢を示している。
 知財保護や技術移転の強要、国有企業への補助金政策など構造的課題は、なお残る。そのなか米中の対立は、円高や株安といったかたちで日本経済にも影響を及ぼし始めた。「米中が膝を突き合わせて議論をしていること自体が市場に安心感を与える」(日本貿易振興機構)との声もある。米側も世界経済への影響を考え、段階的な対立改善の道筋を早急に示してほしい。

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