その巨躯から発する近寄りがたいオーラとは裏腹に、面と向かえば笑顔で相手の緊張をほぐし、ゆっくりと平易な言葉で語りかける。相手に距離を感じさせない包容力からか、住友化学元社長・会長の米倉弘昌さんへのインタビューで過度に緊張したことはなかった▼社長時代を中心に、延べ15年間にわたり米倉さんに取材し記事を書いた。そのときどきの経営方針に加え、三井化学との合併決断とその破談、サウジアラビアのラービグ計画の決断と推進、新規事業の育成、持続可能社会への貢献などがテーマとなった▼どの取材においても感じたのは、化学産業、とりわけ自社への深い愛情と誇りだった。「住友化学を真のグローバルカンパニーにする」。それが結論であり、そのために必要なことを積み重ねてきたのだと思う。ときに大胆に、ときに慎重に▼最後のインタビューは2015年。戦後70年を迎え、さまざまな危機を乗り越え駆け抜けたリーダー諸氏に話を聞く企画だった。米倉さんがそのとき語った後進へのエールはこうだ。「成長分野において果敢に事業展開することが重要だ。そうすれば、自分が何が得意なのかも見えてくる」▼訃報のお知らせには、葬儀は近親者のみで済ませました、とあった。”らしい”ですね、米倉さん。ゆっくりと休んでください。(18・11・27)

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