兵庫県三田市で、精神障害があるとみられる長男への監禁容疑で73歳の父親が逮捕される事件があった。監禁は20年以上に及び、長男は不衛生な環境が原因で片目を失明していた。
 監禁以前、同市が家族から長男の障害について複数回、相談を受けていたことが分かっている。その一方で容疑者は、長男が暴れたり叫んだりすることで近所から何度も苦情を受けていたそうだ。
 昨年暮れには、大阪府寝屋川市で、33歳の女性が15年以上監禁されたうえ死亡した。死因は凍死。身長145㌢で体重は19㌔だった。両親が死体遺棄容疑で逮捕された。閉じ込めた動機を「娘が暴れるため」と説明しているという。
 いくら子供の乱暴な振る舞いに手を焼いたからといって実の親が、これほどひどい扱いを、そうそうできるものではない。しかし乱暴を止めるには、どうしたらよかったのだろうか。治療を受けるさせるにしても、暴れる子供をどうやって病院まで連れて行けばいいのか。監禁とはあまりに極端とはいえ、非道を責めるばかりでなく、そうせざるを得ない何かがあったと考える視点も必要だろう。どこかで適切な支援が受けられていれば、このような痛ましい事件は起きなかったのではないだろうか。
 精神保健福祉法には、精神障害者が、精神障害のために自身を傷つけたり、または他人に害を及ぼすおそれがあると認められた場合に、本人の同意を得ずに行政の権限で入院させる「措置入院」の制度がある。実際には警察の手を借りての入院となる。どうにもならない場合は、こうした方法もやむを得まい。しかし患者の人権を鑑みれば、このような措置は最小限に留めるべきであり、大事なのは退院後の支援であることはいうまでもない。
 厚生労働省は先ごろ「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」を公表した。現行法下で実施可能な、自治体が中心となった退院後の支援の具体的手順を整理している。精神障害者が退院後に、どこの地域で生活することになっても医療、福祉、介護、就労支援などの包括的な支援を継続的かつ確実に受けられるようにすることが目的だ。
 退院後の支援について昨年、措置入院患者への支援強化を盛り込んだ精神保健福祉法改正案が「精神障害者を監視する仕組みだ」とする野党や障害者団体などからの反対に遭い、廃案となった経緯がある。自治体には患者本位の立場を貫くことで、臆することなく退院後支援を積極的に進めてほしい。

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