優れた機能を持つ製品を開発するのと同時に、その製品を、いかに市場に浸透させるかは企業活動にとって非常に重要だ。いくら良い製品でも売れなければ存在意義が薄れる。だからこそ適切なマーケティング手法が求められる。化学製品のマーケティングでも、それぞれに適した手立てがあるはずだ。
 ユニークな取り組みを続けている一社がイーストマン ケミカル。同社はデザイナーやブランドオーナー、スーパーマーケットなどの販売業者など多様なバリューチェーンを対象にポリエステル(グリコール変性ポリエステル)のマーケティング活動を進めている。1990年代半ばから、コポリエステル製品群の一つである「Spectar」で、この手法を取り入れている。透明性、光沢、耐久性、強靭性、耐薬品性、印刷適性などに優れるSpectarと、他社の主要なプラスチックの特性や安全性を詳細に説明。アクリル樹脂を上回る訴求効果を得られるとの理解が浸透し、看板などの用途で市場を広げた。
 透明性や耐薬品性、強靱性、耐熱性を特徴とするコポリエステル「Tritan」でも同じ手法を使った。加工温度域が広いことから複雑で込み入った製品デザインが可能なことに加えて、ビスフェノールAフリーの高機能プラスチックという評価を確立。ジューサーなどの家庭用品、タンブラーなどの飲料容器など多彩な分野で使われているようになった。Tritanを採用したのは、ほとんどが新しい顧客だというから、この手法の効果は絶大だ。
 デザイナーを支援する充実したネットワークを整えたこともマーケティング活動の成果に結びついている。デザインエンジニアを米国、中国、欧州に配して加工の仕方やデザインの可能性など、デザイナーの求める多様な情報を提供。同社の重要な製品の一つであるTritanの可能性を広げた。
 BASFが計画している「クリエーションセンター」も、自社製品の可能性を最大限に引き出そうとする努力の一つだ。最新のデジタル技術と高機能プラスチックやポリウレタンをはじめとするBASFの素材を融合し、アイデアから具体的なソリューションを創出するための拠点になる。2019年半ばにもドイツ、日本、中国、米国に開設する予定だ。ドイツでは、同社デザイナーが顧客と協力し、材料サンプルを使って新製品開発を行う拠点「designfabrik」(デザインファブリーク)を、このクリエーションセンターに移すことになっている。どのような成果を得ることができるか注目したい。

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