日本の物流業界で深刻化する人手不足への対策が急がれている。少子高齢化で中長期的に国内における労働人口の減少は避けられない。一方で、小口多頻度輸送や日時指定配送の増加などで、これまで以上に人手が必要な状況になってきている。こうしたなかでロボットやAI(人工知能)の導入による業務の自動化、効率化は有効な手段となる。
 国際輸送大手のDHLは先ごろ、IBMと共同で「物流業務におけるAIの活用」に関する報告書をまとめ、公表した。物流業界における影響や事例を取り上げ、人間の能力を大幅に強化するAIの可能性を明らかにしている。
 AIは、音声アシスタント機能として急速に普及するなど、すでに消費者に広く浸透しつつある。産業界でも、多くの業種で日常業務にAIを導入しており、技術的な進歩により物流業界でのさらなる応用も可能になってきた。
 AIの導入は、これまでの受動的オペレーティングモデルから能動的・予測的モデルへのパラダイムシフトを実現する可能性を秘めているという。例えば最新の画像認識技術で積荷・輸送状況を追跡することで、自律的な一連の輸送・輸送量の変動を事前に予測可能となる。人間の能力を増強すると同時に定型作業を省くことで、より付加価値のある業務に人的資源を振り向けることができる。
 こうしたメリットを享受するため、米国ではロジスティクス業界でAIあるいはロボットの導入が進んでいる。これに対し日本の物流業界は、自動化への取り組みで後れを取っていると言わざるを得ない。
 その理由について事業用不動産サービスのCBREは「日本の物流現場のスタッフの賃金が米国に比べ安価なことが原因」と分析している。倉庫内作業を例にとると、日本の作業員はスキルが高いにも関わらず、平均時給は米国より13%低い。さらに日本の全業種の平均時給との比較でも23%低いというデータがある。安価で優秀なワーカーを採用できる日本の物流業界においては、自動化投資の効果が得にくいというわけだ。
 とはいえ労働力不足は一過性のものではなく、構造的な問題だ。日本の生産年齢人口は1995年の8700万人をピークに減少を続けている。2017年には7600万人となり、さらに30年までに700万人減少するとみられ、労働力の確保は先行き一段と厳しくなることが予想される。自動化への投資と合わせて、賃上げを含めた作業員の待遇改善を急がなければならない。

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