今月5日から9日にかけて西日本を記録的な豪雨が襲い、多くの人命や家屋などの財産が失われ、崖崩れによる道路の遮断といった甚大な被害を与えた。地域農業、林業、漁業の第1次産業の経済的被害も深刻な状況にある。政府の非常災害対策本部、農林水産省による緊急自然災害対策本部が設置され、対策の検討など速やかに指示を行ったが、復旧に時間がかかるだろう。農業への被害を少しでも減らすには、まず事前の対策が肝心だと生産者、団体に強く意識してもらうことが必要。また国や自治体も、いつ災害が発生してもおかしくないという危機感を持つべきであり、やはり事前の対策に重点を置いて取り組む姿勢を示すことが大切だ。
 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が今月公表した水田域の豪雨被害のリスクを評価する手法の開発は、災害予測するうえで新しいツールになるのではないか。農業分野における事前のリスク評価技術が今後も引き続き開発され、農業全般あるいは農地周辺部を含めてリスク評価できるように、国・自治体は資金面においても十分支援すべきである。
 農研機構の開発した手法は、水田中心の地域などで将来起こり得る、さまざまな豪雨パターンのシミュレーションができる。そのパターンによって今までに経験したことのない水田冠水を含む被害予測を可能とする。一連の手法は3ステップで構成される。①複数の気候変動の予測結果から豪雨の特徴を調べ、それを反映させて将来起こり得る多数の豪雨をシミュレーションし、そこから地域で発生し得る豪雨の強度と発生頻度を推定②得られた豪雨を使い、それぞれの豪雨で引き起こされる水田の冠水被害状況を推定し、それを基に水稲被害による減収の量をトン単位や割合、金額で分かりやすく推定③多数の推定結果からリスクを統計的に評価する-というもの。
 近年の豪雨は日雨量が増え、発生頻度も上昇傾向にある。豪雨は、水稲減収要因の一つであり、排水路の整備が進んでいても甚大な被害を避けることができないのが現状だ。気候変動の影響が豪雨を強大化させると予測され、農林水産業の被害481億円とされる今回の「平成30年7月豪雨」並みの災害が再び発生するリスクは高い。
 ただ農研機構が開発した手法は、農業と情報技術双方に精通した専門家でなければシステム化が難しい。指標となるデータ項目の追加など改良の余地もある。予測システムの開発が盛んになり「災害を被る前に農業を守る計画づくり」が各地に広がる端緒となってほしい。

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