訪日外国観光客もリピーターが増え、コト消費などニーズはますます多様化しているようだ。そんななかでも「おもてなし」の主役を担うホテルの重要性は変わらない。その歴史は開国直後の明治時代まで遡る▼貿易が盛んだった横浜や神戸、大都市の東京、大阪、主立った観光地にホテルが建設された。1930年(昭和5年)には鉄道省の外局として国際観光局が設置された。外国人旅行者誘致の一環としてホテルの整備が重要施策だったようだ▼ジョン・レノンが宿泊したことでも知られる軽井沢の万平ホテル。客室に置いてある「創生記の記憶」が興味深い。営業開始は1894年(明治27年)。旅籠「亀屋」を営んでいた佐藤万平がカナダ人宣教師と交流するなかで外国人向けホテルへの改造を決断する▼ホテルの顔であるアルプス館はヨーロッパの山小屋のような外観が特徴だ。老朽化が進んでいた本館を建て直すかたちで1936年(昭和11年)に完成。建物に一歩足を踏み入れるとタイムスリップした感じにとらわれる。昨年、国の登録有形文化財に登録された▼2代目万平こと国三郎は野心家だったようだ。昭和に入ると熱海、東京、名古屋に相次いでホテルを建設した。今でいうならチェーン展開。戦争の影響もあって軽井沢だけが残ったが、先見の明があったといえよう。(19・3・1)

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