欧州委員会の植物・動物・食品・飼料常設委員会(SCOPAFF)がニコチン様の殺虫剤成分を含むネオニコチノイド系農薬について、種子処理を含め屋外での使用禁止を決めた。花粉を運ぶミツバチに対する悪影響を考慮したものだという。しかし、それは管理可能な範囲にあるのではなかったか。そもそも前提となる欧州食品安全機関(EFSA)の評価自体、妥当性が疑われている。その一方で代替手法が与える環境への負荷は不明確。木を見て森を見ぬことになってはいないだろうか。
 使用禁止の対象となったのはイミダクロプリドとクロチアニジン、チアメトキサムという3種のネオニコチノイド系農薬。バイエルは「ラベルに記載した方法で使う限り安全だ」としたうえで、十分な影響評価を行わないままに今回の決定がなされたことを批判。効果が低い農薬への回帰や抵抗性発達リスクの増大、また農薬散布量が増えることになってCO排出量の増加するなど、意図せぬ結果につながるとの見解を示した。
 シンジェンタも「評価結果はは、明らかにネオニコチノイドが食糧不足や病気、寒冷な気候に比べて最小限の脅威でしかないこと示している」ことを強調し「欧州の農家と環境に、良い結果をもたらすとは思わない」と述べている。
 遺憾を表したのは農薬会社ばかりではない。欧州の農業協同組合・生産者団体COPA―COGECAも、EFSAの示す結果を受け入れたうえで「それでも適切な緩和手段とともに使用は認可されるべきだった」との声明を出し「代替手段がない作物もあり、農家の生活と食糧供給を危険にさらすことにもなる」と懸念を表明した。
 社会の関心が高い科学ニュースについて、独立した立場から専門家の意見を発信している英国の団体「サイエンス・メディア・センター」が、今回の欧州委員会の決定に対する専門家らの意見を公表している。このなかでは「論理的な決定だ」と基本的に支持を表明する科学者からも「同様の農薬に置き換わるだけなら堂々巡りとなる。ミツバチなどの昆虫が直面する問題がネオニコチノイドだけだと思ったら大きな間違い。偶発的な病気の流入や、花や生息地の不足、他の化学品との接触などにも対抗していることに気がつくべきだ」と、視野を広範に持つ重要性が指摘された。
 農薬や遺伝子組み換え作物などを巡る欧州委員会の判断は、これまでも「科学に基づかない政治的な態度によるもの」と批判されてきた。臭いものに蓋をしただけならば、ポピュリズムとのそしりは免れまい。

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