箍を締める、箍がゆるむ―。「たが」は樽酒のまわりにはめるもので竹から作られる。四斗樽には合計7つの箍が使われることが決まっている。四斗樽はもともと日本酒を灘など関西の酒所から江戸に運ぶために作られたという▼酒樽は一升瓶の普及などによって需要が縮小。それにともなって樽製造会社の廃業が相次ぎ、樽職人も減少の一途をたどった。そのことに危機感を抱いたのが菊正宗酒造(兵庫県東灘区)。伝統を守り後世に伝えていくため3人の職人を雇用した▼2017年に樽酒マイスターファクトリーを開設。ここでは職人の技を見学できる。入ると杉の香りが漂う。樽に使われているのは奈良の吉野杉。酒樽作りは釘も接着剤も使わない。節が少なく木目が揃っている吉野杉が最適とされた。樹齢100年以上の原木を競りで買い入れる▼ウイスキーは樽に何年も寝かせることで味も香りも芳醇になっていく。これに対して樽酒は2週間程度。それ以上だと、えぐみが出てきてしまうそうだ。もちろん酒樽として再利用はできない▼新年会などお祝いの場の鏡開きでしか酒樽をみかけることがなくなった昨今。国の文化審議会は灘の酒樽作製技術を記録作成などの措置を講じるべき無形の民俗文化財に指定するよう答申。菊正宗では女性の見習い職人が修行に励んでいる。(19・11・1)

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