成長が期待されるライフサイエンス分野で事業育成を図るため、関西に本社を置くファインケミカル企業がさまざまな取り組みを行っている。研究開発の強化などに加えて、戦略的なM&A(合併・買収)を含め活発な投資が目立つ。各社ともライフサイエンス分野のイノベーション活動を支える高いポテンシャルを生かして、積極的に事業を展開していく構えだ。
 第一工業製薬は、食品やヘルスケア製品を製造販売するバイオコクーン研究所(盛岡市)および、医薬品などの受託製造を手がける池田薬草(徳島県三好市)を完全子会社化しライフサイエンス事業に本格参入した。バイオコクーン研究所は大学発のベンチャー企業。岩手大学の鈴木幸一名誉教授がカイコや桑の持つ機能性の解明研究を進めており、老化モデルマウスによる実験で海馬の傷を治癒する神経保護特性を立証し、論文を発表している。池田薬草は、天然物からの抽出物を濃縮し、スプレードライによって粉末化する技術を持つ。医薬品原料などの製造が可能なGMP設備を保有しており、徳島県や徳島大学と連携して研究を行っている。第一工業製薬では、環境・エネルギー、電子・ITとともにライフサイエンスを重点分野の一つと位置付けており、両子会社との連携で事業の拡充を図る。
 多木化学は、植物に頼らない培養系でバカマツタケの完全人工栽培に成功した。同社は6年ほど前から研究を開始。早い段階からバカマツタケ原基の形成に成功していたが、子実体(傘のあるキノコの形態)にすることができず、形態変化を促すための各種シグナルを試し続け今年4月、初めて子実体への分化に成功した。今回の技術を用いれば、キノコ工場で季節を問わず栽培できるようになる。同社では安定栽培技術、供給体制の構築を進めながら事業化を目指していく。
 神戸天然物化学は、神戸市中央区に本社・研究所用の土地および建物を取得した。本社機能と神戸営業部門を集約し経営効率化を図る。また同物件を新たな研究開発拠点とすることで開発本部の機能を強化し、医薬分野を中心に研究、開発および生産ソリューション提供能力の向上につなげる方針だ。
 超高齢社会・健康長寿社会の進展を背景に、ヘルスケアや医療、健康食品関連の市場は大きく拡大することが予測されている。一方でライフサイエンス業界は急速に変化しており、参入企業にも大胆な対応が求められる。変化に効率的に対応し、イノベーションを続けることで新たなビジネスを創出してもらいたい。

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