文部科学省が管轄するCOI(センター・オブ・イノベーション)プログラムの一つである「革新材料による次世代インフラシステム」の開発で、拠点が置かれている金沢工業大学による中間成果報告会が、このほど開かれた。2013年の開始以来、第2フェーズ最終年度である6年目に入ったのを受けて実施した。プロジェクト中核メンバーの講演だけでなく、著名建築家である隈研吾氏をはじめ海洋や運輸、土木など各分野の専門家も登壇してコンポジットを中心とした次世代材料への期待を語った。市場のニーズを常に意識していることが示されたのが印象的だ。研究員が常駐する開発品の展示コーナーも充実。来場者との活発な意見交換により、新たな発見やネットワークの創出も狙った。
 金工大COIが目指すのは、革新素材と革新製造プロセスの融合により、従来の鉄やコンクリートに代わる、軽量・高強度で長寿命、低コストかつ加工しやすく大量生産可能な革新構造材料を開発し、次世代インフラシステムとしての展開につなげること。とくに”社会実装”に重きを置いている。COI自体が10年後の社会を見据えたビジョン主導型のチャレンジングな研究開発支援システムとしてスタートしており、ビジョン実現のために必要なものを開発することで、技術を眠らせることなく速やかな実用化を目指す。一社、一大学でできることに限界があるとの認識の下、金工大COIに参画する企業、大学の枠を超えたネットワーク構築にもつながり始めた。
 テーマの幅は広い。コンポジットの大量生産化に向けた熱可塑性樹脂の活用、新規成形方法の開発はもちろん、バイオの技術を活用したマトリックス樹脂開発や、ポリビニルアルコール(PVA)の改良による安価かつ軽量な高強度次世代強化繊維の開発にも挑戦している。インフラ分野のテーマでは、バサルト繊維も俎上に載っている。慶応大学とも連携して大型3Dプリンティングによる革新的建築壁モジュールも研究しており、夜のうちに現場でデータを打ち込んでおけば、朝までに壁モジュールができているという時代が、いずれ来るという。
 コンポジットの歴史は長い。しかし金工大COIが取り組むテーマは、既存技術では発想できないような意欲的なものが多い。参画企業・大学が技術を囲い込むことなく、”アンダーワンルーフ”の下、技術の社会実装を急いでほしい。コンポジットで世界をリードしてきた欧州にも負けないような、新規性が高く、しかも巨大な市場の創出につながると期待している。

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