1813年(文化10年)に刊行され1922年(大正11年)まで増刷されたロングセラーがある。1世紀を超えて愛読されたその書は『都風俗化粧伝』。木版による同書は大学図書館などに貴重資料として所蔵されているが、1982年に平凡社の東洋文庫から翻刻されており、こちらは購入できるし各地の図書館にも置いてあるだろう▼女性のみだしなみについて総合的に指南した美のマニュアルブックである。「毛論こし人の応宝と愛でたたえし夜光の玉といえど、みがきよそおわざればひかりなしとかや。女もそれにことならずして…」の叙文から始まり、どのような容姿の女性も「百媚百嬌をそなふ美人となさしむる」とうたう▼顔面、手足、髪、化粧、恰好、容儀、身嗜の7部構成。化粧法から着こなし、身のこなしまで総合的に学べる。小目次をすこし拾ってみる。〈色を白くし、肌を細かくし、美人とする伝〉〈皺をのばし、光沢よき顔にする伝〉〈鼻の低きを高う見する伝〉〈眉毛を作る伝〉〈口唇のあつきをうすう見する伝〉等々。まったくもって懇切丁寧な手ほどきなのである▼化粧品が大量生産され、庶民の手に届くようになったのは、上方に町人文化が生まれた17世紀に入ってからだという。それから400年余り。美を求める女心はなんら変わっていないようだ。(19・8・21)

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