米国におけるシェールガス・オイル由来の石油化学計画の影響が、2020年にもアジア地域に波及するとの見方が出てきた。同国において基礎原料であるエチレンの輸出ターミナルが完成し、アジア向けの輸出が始まることが背景にある。ポリエチレンの大増産については、世界的な需要拡大により市場に吸収されるとの楽観論が大勢を占めているが、構造的に価格変動が起こりやすい基礎原料の場合には注意が必要だ。
 シェールガス・オイルを原料とした石化の大増設が進んでいる米国では、供給余剰となったエチレンの価格が大きく下落している。足元のスポット価格は1ポンド当たり13セント程度で、トン当たりに換算すると約290ドルになる。これはコストが安いとされる米国でも、条件によっては変動費を割り込む水準であり、一部の企業が減産を余儀なくされている。
 一方、石化製品の需要が総じて好調なアジアでは、エチレンスポット価格が足元で1300ドル近い水準で推移している。米国との価格差は実に1トン当たり1000ドルもある。同一製品の価格が、地域でこれほど違うのは驚くべき事態。米国にエチレンの輸出インフラが整っていないことが最大の要因である。ただし20年には、米国に年間取り扱い量100万トン規模のエチレン輸出ターミナルが完成する見通しで、アジアのエチレン市況が大きく変動する可能性が高まっている。
 汎用樹脂などを米国からアジアに輸出する場合、コストは1トン当たり100ドル程度かかる。しかし常温において気体であるエチレンは、圧縮して液体にしたうえでマイナス200度C近い低温を保って運ばなくてはならない。このため輸出インフラの投資には巨額を要し、輸送を行うためのエチレン船のコストも高い。
 この結果、米国からアジアまでエチレンを輸送するには、輸出ターミナルの使用コストなども含めて1トン当たり400~500ドルかかるとみられている。それでも現在の米国スポット価格の水準なら、アジアでは700~800ドルで入手できる計算となる。
 エチレン価格の低下は、原料高に苦しむ川下企業にとっては朗報であり、ポリエチレンをはじめとする誘導品段階では、さらに大きな利益を享受できる可能性もある。ただ基礎原料の市況軟化は、川下製品の価格下落を招く要因ともなる。化学企業は川下産業を含めたサプライチェーン全体を俯瞰し、エチレン価格の低下が、どのような影響を与えるか冷静に見極め、必要な対応を検討すべきだろう。

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