ソフトバンクグループの孫正義氏はビジネス誌のインタビューで人工知能(AI)について語っている。インターネットによってとくに小売りとメディアの世界で産業が置き換わりつつあるとした上で、「AIが残りの産業全部をひっくり返しにいく時代が始まる」と将来を読む▼情報革命は知識と知恵から成る「脳の働き」の拡張であり、インターネットは知識の、AIは知恵の革命。今後はより大きな対価が期待できる知恵を働かせる勝負になるという▼AIを中心とした情報化時代の問題に対処するために、人文学と哲学の研究を大規模に進めることが必要だと主張するのは、哲学者でボン大学教授のマルクス・ガブリエル氏だ。近刊『未来への大分岐』のインタビューで、「あらゆる大学をMIT的な技術研究機関に変えたがる人たちがいるようで、そうなったら情報化時代の課題を扱う哲学的研究はできない」と憂う▼現在の大学は、AIなどへの研究費が増やされる一方、人文学の予算が削られる傾向にある。インタビュアーの斎藤幸平氏は「むしろ、非人間化の危機を前にして、人文学が重要になってきているというのに」と警鐘を鳴らす▼AIがもたらす社会の大変化と、それに翻弄されぬ人間性を涵養する大学と学問。これを二律背反としない智慧は必ずあると思いたい。(19・12・4)

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