低炭素社会に向けた革新的技術としてCO2回収・貯留(CCS)の実用化が期待されている。国際エネルギー機関(IEA)は、2100年までに世界の気温上昇を2度C以内とするには、60年までの累積CO2削減量14%をCCSが担う必要があるとしている。CCSは、CO2削減手段としては再生可能エネルギーに比べ現実感が乏しいが、目標達成に欠かせぬ一手であることは間違いない。
 CCSを組み合わせた石炭火力発電においてコストは15~19円/㌔㍗時と試算されている。メガソーラーより高いものの、陸上風力とほぼ同等、バイオマス専焼発電よりも安い。一定の前提条件の下では、CCSは低炭素技術としてコスト競争力を持つと評価されている。
 海外では、枯渇しつつある油田にCO2を圧入するEORが実用化されており、世界で稼働中の37件の大規模CCSプロジェクトの大半を占める。北米で先行し、中東や東アジアでも増える傾向にある。また米国、カナダ、欧州は、50年に向けたCO削減でCCSを長期戦略の重点の一つに位置付け、取り組みに力を入れている。
 日本においては12度から北海道苫小牧市でCCSの大規模実証事業が実施されており、16年度からこれまでに約18万㌧のCO2を圧入している。CCSの実用化には、コストの大半を占めるCO2の分離回収費用の低減が重要だが、日本は同技術では世界をリードする位置にいる。関西電力はアミン吸収材をを担持させた固体吸収材の実用化試験を計画。また地球環境産業技術研究機構(RITE)は分離膜技術を用いた実証試験を米国で行う。
 適地調査も進められており、RITEは日本で1460億㌧のCO貯留が可能と評価している。また数十億㌧級の貯留が期待される地質が日本近海に数カ所あるという。ただCO2排出源の多くは太平洋岸にあり、貯留地への輸送手段をどうするかという課題が残っている。
 苫小牧での実証で技術的な可能性が示されたが、輸送手段については今後の検討となる。長距離輸送にはCO2専用船が有力だが、運用実績はなく、関係法令も確認する必要がある。
 日本でCCSを実用化するにはトータルコストの削減、貯留適地の確保、地域との連携が不可欠となる。一方でLNG船などの実績を生かし、世界に先駆けて輸送技術を確立すればプラント輸出にもつながるだろう。CCSは石炭火力だけでなく、化石燃料からのCO2フリー水素製造にも適用できる。日本の技術が世界に貢献することを期待したい。 

PDF版のご案内

新聞購読のご案内

社説の最新記事もっと見る