地球環境戦略研究機関(IGES)は「日本の2030年のエネルギー起源CO2排出削減目標は容易に達成できるため、NDC(パリ協定において「自国が決定する貢献」)目標を引き上げることは可能だ」とするリポートを公表した。政府が前提とする経済成長は高すぎるとし、民間の成長予想を適用すれば30年目標の達成は難しくないという。ただ「想定していたほど経済が成長しないので引き上げる」というのは、あまりに消極的すぎる。
 リポートによると、主要な民間シンクタンク・研究機関が想定している15年から30年にかけての実質国内総生産(GDP)の年平均成長率は1・0%程度という。一方、政府は1・7%を見込むが、この水準は1991年のバブル経済崩壊以降、達成されたことがない。
 そこで民間の予想を前提とすると、30年目標は、原子力発電量の割合を15%にできれば現状から追加の対策を取らずとも達成できる。原子力発電量の割合がゼロであっても、合理的な誘導策や義務付けなどを行う範囲で収まり、初期投資が大きい低炭素技術・製品の導入を推進する必要はない。従って踏み込んだ対策を用意すれば目標を引き上げられるとした。
 ただ、この見解は経済と環境をめぐるパラダイムシフトを十分に考慮していない。今月、30年目標に続いて50年を見据えた目標を策定するにあたり、安倍首相は、こう述べている。「もはや温暖化対策は企業にとってコストではない。競争力の源泉だ。環境問題への対応に積極的な企業に、世界中から資金が集まり、次なる成長とさらなる対策が可能となる。まさに環境と成長の好循環とも呼ぶべき変化が、この5年余りの間、世界規模で、ものすごいスピードで進んでいる」。政府は気候変動対策を新たな成長の契機ととらえている。
 日本において、気候変動対策のビジネスへの取り込みは始まっている。IGESのリポートでも、13年から15年にかけてGDPを平均1・2%成長させながら、エネルギー原単位とCO2排出原単位を改善するという「経済成長とCO2排出量のデカップリング」が観測されたことを報告している。
 パリ協定では、締結国が5年ごとに目標値を積み増す「目標引き上げメカニズム」を採用している。日本においても「13年比26%減」とする30年目標を20年には再検討しなければならない。経済の伸び悩みではなく、経済と環境の好循環を一層ダイナミックなものとしていくことによって、目標の引き上げを可能にしてほしい。

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