先月末、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の第6回閣僚会議がシンガポールで開かれた。米中貿易摩擦や米国の対イラン経済制裁発動など、政治的思惑も背景に世界経済が混迷の度を増すなか、日本や中国、インド、東南アジアなどの16カ国が参加するRCEPは、早期妥結に向けて各国の協調が問われている。日米が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を主導してきたのに対し、RCEPは中国が主導。ただし米国との貿易摩擦に時間と労力を割かれ、RCEPの優先順位が落ちているように映る。TPPにおける経験と実績を生かし、日本はRCEPでもリーダーシップを発揮し、長期的な視点からアジアの自由貿易網を強固なものにすべきである。
 RCEPには、TPPに参加してない中国、インド、韓国、タイ、インドネシアなどが加わっている。合わせた人口は34億人と世界の約半分を占め、国内総生産(GDP)は世界の3割相当の約20兆ドルに上る広域貿易圏だ。関税の自由化にとどまらず、さまざまな分野で規制や投資障壁の緩和が期待され、国をまたいだサプライチェーンの構築、通関コストの大幅削減などが現実のものとなる。
 シンガポールでのRCEP閣僚会議は、今年内の実質妥結を目指す共同声明を採択して閉幕した。11月にはシンガポールでASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議、パプアニューギニアでAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議がそれぞれ開催され、RCEP会合も行われる方向にある。ここで実質妥結することが期待されるが、道程は険しそうだ。
 RCEP参加国の経済発展度合いはさまざま。このため関税撤廃や知的財産権保護を進めたい日本や豪州などと、自国産業を保護したい中国やインドなどとの間には溝がある。ASEAN諸国の間でも温度差がある。自由貿易を率先するシンガポールなどに対し、マレーシアのマハティール首相は、自国に利益があるのか調査する必要があると慎重な姿勢を示す。
 大国の動きも気になる。RCEPを主導してきた中国は、今回の閣僚会議に担当閣僚の派遣を見送ったため、主要分野での前進がみられなかった。その中国を最も警戒する国の一つがインド。中国に対し膨大な貿易赤字を抱えており、関税の自由化が進めば、さらに赤字が膨らむ可能性がある。
 世界経済は保護主義の台頭が懸念されるが、これから主役を担うアジアで公正な自由貿易網を築くため、日本はRCEPでも各国の調整役としてリーダーシップを発揮してほしい。

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