新型コロナウイルスワクチンと季節性インフルエンザワクチンを組み合わせた混合ワクチンの開発が始まろうとしている。コロナワクチンの接種が進んでも感染の波は引かず、コロナウイルスとの戦いは今後も続く見込み。製薬各社は来年以降のコロナ追加接種に対応するとともに、インフルと同時に免疫強化できる混合ワクチンの開発に乗り出している。とくに今回、高い有用性が証明されたメッセンジャーRNA(mRNA)ベースのワクチンは、インフルなどほかの感染症でも応用が広がりそうだ。(赤羽環希)

 混合ワクチンの開発が最も進んでいるのが米ノババックス。開発中のコロナワクチンと4価インフルワクチンを混合したワクチンの第1/2相臨床試験(P1/2)を開始した。コロナ感染歴があるかコロナワクチンを接種ずみの人を対象に豪州で実施する。来年上期に結果が出る予定。両ワクチンを個別に同時接種する臨床試験では、免疫原性や安全性が変わらないことを確認した。コロナワクチン単剤の開発では他社に後れを取っているが、混合ワクチンで1番手の実用化を目指す。遺伝子組み換えたんぱくのワクチンで、効果を高める免疫増強剤(アジュバント)も使うとみられる。

 これに続きそうなのがmRNAワクチンの開発企業だ。モデルナは、mRNAベースの4価インフルワクチンのP1を米国で実施しており、P2/3の準備にも着手した。現在使われているコロナワクチンを組み合わせた混合ワクチンも前臨床段階。一つのワクチンで複数の呼吸器系感染症をカバーする開発を進めていく計画で、RSウイルスやヒトメタニューモウイルス(hMPV)などとの混合も開発する。

 仏サノフィが買収を決めた米トランスレート・バイオも、単味インフルワクチン2種類のP1を実施中で、年内にも中間結果が出る。両社はコロナワクチンも共同開発している。米ファイザーと独ビオンテックも、3年前から共同研究してきたインフルワクチンのP1を近く始める。

 mRNA技術は、ウイルスのゲノム情報さえわかればワクチンを短期間で設計できるため、コロナやインフルのようにウイルス株が変化しやすい感染症のワクチンに有用と期待されている。モデルナやファイザーのコロナワクチンは予防効果の有効率が90%台を記録し、従来の感染症ワクチンを大きく上回る有効性データが報告されている。インフルワクチンでも同様の有効性が立証されれば、有効率50~60%とされてきた従来のインフルワクチンから置き換わる可能性がある。

 日本でmRNAワクチンを研究開発している製薬企業は第一三共など。同社の眞鍋淳社長は、「まずはコロナワクチンの開発と供給を成功させることが最優先」としたうえで、季節性インフルなど従来の技術で作られている感染症ワクチンをmRNAワクチンに置き換えていくような開発にも意欲を示している。

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