「日本」という表記をどう読むか。日頃は「ニホン」と「ニッポン」を無意識に使い分けるが、どっちが正しいかと問われると答えに窮する。社名に「日本」が付く上場企業の呼称はほぼ6対4で前者の方が多い。各種の調査でも普段の使い方は前者が優勢だが、決定的な差ではない▼1934年3月22日、国語審議会がニッポンに統一する案をまとめたが、採択には至らなかった。以来、国会でも何度か議論されたが正式決定はない。2009年に、当時の麻生内閣が衆議院の質問趣意書に「どちらかに統一する必要はない」と答弁。これが政府見解とされている▼答弁書がいうように、どちらも広く通用している。東海道五十三次の起点は、お江戸ニホン橋。大阪の道頓堀川に架かるのはニッポン橋。いまさら呼び方は変えられまい。この曖昧さ、よく言えば柔軟性が日本らしいというところか▼語感は「ニッポン」の方が圧倒的に力強い。だからスポーツの応援では「ニッポン・チャチャチャ」が定番。サッカーの国際試合ではサポーターが叫び続ける。昨秋のラグビーW杯でも、スタジアムやパブリックビューイング会場で連呼された▼この夏、我らが日本代表チームを鼓舞する「ニッポン・チャチャチャ」の応援コールが列島中に響き渡る…。そのイメージはできているのだがさて。(20・3・23)

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