横浜市で開催中のバイオ系医薬の展示会「バイオジャパン2020」で新型コロナウイルスワクチンの開発をテーマとするパネルディスカッションが行われ、コロナワクチンを開発している国内外の製薬企業担当者らが意見を交わした。日本でも年末ごろから国産ワクチンの臨床試験が始まる見込みだが、有効性を検証する大規模な臨床試験をどう実施するかが課題のようだ。

 海外では承認申請段階に進もうとしているワクチンが出始めてきたが、日系企業の多くはこれから臨床試験が始まる段階だ。塩野義製薬とKMバイオロジクスは年内、第一三共は来年3月頃に最初の臨床試験を始める計画だ。国内1番手で治験入りしたアンジェスは、来月にも最終段階P2/3を開始する予定。

 今後の開発に向けた課題は、大規模な臨床試験をどこで行い、有効性をどう評価するか。外資系企業は、感染流行地である欧米や中南米、アフリカなどで数万例規模の臨床試験を行っている。だが日本は海外と比較して感染状況が落ち着いており、発症予防を評価する大規模P3を国内で早期に行うのは難しい。

 また、大規模なグローバル試験を行える開発力は日系企業にない。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の荒木康弘ワクチン等審査部長は、「大規模な臨床試験を日本で行えない場合は海外でもできるようにする、速やかに実行できる体制作りが必要になる」と話した。

 日本のワクチン政策のあり方についても意見を交わした。アンジェス創業者の森下竜一大阪大学教授は、「新しいパンデミックは、また5年後ぐらいに来る。近くの国から。日本は常に最前線にいるという状況が数十年は続く」との見解を示し、今後の安全保障の観点からも国内に2カ所程度「ワクチンセンター」を設置することを提案。国の支援の下、最低でも1億人分のワクチンを3~4種類供給できる体制が理想とした。

 日本で初めてとなるmRNAワクチンを開発する第一三共は、今回の開発でmRNAワクチンの技術基盤を確立して将来につなげる考え。同社の武下文彦ワクチン研究所長は、「mRNAワクチンは核酸配列を変えるだけで新たなウイルにも対応できるので、次のパンデミックにも貢献したい」と話した。

 KMバイオの園田憲悟氏は、これまで日本にとって感染症が「よその国の話」だったことも影響し、感染症やワクチンに関する日本人研究者や企業の「層が薄い」ことを指摘。「いざというときに立ち上がる力があるかは、研究者や企業の層の厚さにかかっている。今回を機に感染症対策に対する注目が集まって、いい方向に進めば」と期待した。

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