冬のまつりやイベントは東北や北海道など多雪地域に数多ある。なかでも有名なひとつが、秋田県横手市の小正月行事「かまくら祭り」。市内に100個ほどの巨大なかまくらが設えられ、幻想的でメルヘンチックな世界を醸し出す▼満月の夜、月明かりに雪の祠が浮かぶ。ロウソクの炎に明るく照らされる内部に子供達が入り「はいってたんせ(お入り下さい)」と言いながら餅や甘酒を振る舞う。同地で450年も前から続き、いまの形の行事となって123年目だという▼その伝統行事が危機に瀕している。2月15日の開催に向け、ひと月前から準備入りしたが1月14日時点で積雪ゼロ。山間部などから集めて必要量を確保するにせよ、周囲に雪が無くアスファルトむき出しでは風情を欠く。地元には懸念の声が広がる▼今冬の雪不足は多地域にわたり、各地で雪や氷を売り物にしたイベントの中止が相次ぐ。全国のスキー場の3割が年明け後も営業できず、冬季屋外競技の大会が中止や延期に追い込まれている。除雪業者には緊急融資が必要なほど深刻な事態だ▼雪は、降り過ぎると生活や経済に大きな打撃を与える。逆にここまで記録的な少雪になると、地域の経済が回らなくなる。気象庁の予報では2月にかけても暖冬少雪。少し外れて各地に適量の雪が降り、積もることを期待したい。(20・1・20)

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