冷たいそばを食べ終わって、すこし冷えたお腹には蕎麦湯が心地よい。つゆをそれで割ってすすると、食べ終わった感も生まれる。この蕎麦湯を入れている容器は「湯桶」という名をもっているが、さてなんと読んだらいいだろうか▼訓読みなら「ゆおけ」、音読みなら「トウトウ」なのだろうが、これは「ゆトウ」と読み、こういう訓・音の順で訓音交じった読み方を「湯桶読み」というのだそうだ。湯桶の他には、朝晩(あさバン)、雨具(あまグ)、場所(ばショ)、見本(みホン)などがある。ちなみに訓音交じりでも音・訓の順の言葉を「重箱読み」という。重箱(ジュウばこ)、台所(ダイどころ)などがある▼熱海の土石流の惨事を伝えるニュースを聞いてすこし驚いた。「盛り土」を「もりド」とアナウンサーが読んでいたからだ。これは湯桶読みにあたる。訓で通すなら「もりつち」であろう。なぜ、「つち」でなく「ド」となったのか。聞いてすぐに意味がとりやすいのは「もりつち」だが、発音が早いのは「もりド」。建設現場では意思表示をさっさとスピーディーに行う必要があったからかもしれない。1音の遅延さえもどかしいと▼災害の原因は究明の途中ではあるが、もりドという読み方と何かつながりがあるような気がしたのは思い過ごしか。(21・7・14)

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