【上海=但田洋平】中国の4月の主要経済統計は経済活動の本格回復を印象づけるものとなった。生産の動向を示す工業生産は前年同月比3.9%増となり、3月のマイナス1.1%からプラスに転じた。半導体など好調業種に加え、車や電気機械、紡績などが軒並み改善傾向を示し、化学原料および化学品製造業の付加価値額も3.2%に拡大した。今後、中国の生産が世界経済を牽引できるか、内外の需要動向に注目が集まる。

 5月13日、上海市内の花園飯店。化学企業が多数加盟する日本商工クラブの資源・化学品部会は、およそ100人の会員を集めて今年初となる年次総会を開催した。本来は4月に開催予定だったが新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。あいさつした松崎宏部会長(三井化学中国総代表)は「中国はだいぶ落ち着きを取り戻してきた。大人数でこうして集まれることを嬉しく思う」と喜びを示した。

 松崎氏は取り巻く事業環境認識について三井化学の近況を紹介しながら、「操業率も以前の状況に戻ってきた。販売面では自動車向けはまだ厳しいが、半導体やヘルスケア関連製品は堅調だ」と言及。苦戦していた車部材についても「引き合いは増えてきている」とし、今後の回復に期待を込めた。

 14日に発表された中国の主要統計はこれを裏付けるものとなった。3月に0・7%にとどまっていた化学原料および化学品製造業の付加価値額は4月は3%台に回復。ゴム・プラスチック(5・2%増)もプラスに転じた。

 主要製品ではスマートフォンの生産は4月も2%のマイナスと苦戦が続くが、対象的に好調を維持するのが半導体産業。集積回路の生産量は3月、4月と前年対比で2割以上の伸びを示す。半導体受託生産の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は第2四半期の売上高が前期比5%程度増えるとの見通しだ。

 新車販売にも回復の兆しがみえ始めた。中国自動車工業協会(CAAM)が発表した4月の新車販売台数は4・4%増の207万台と、22カ月ぶりの前年越えとなった。

 回復しつつある中国経済だが、当面の懸念は伸び悩む内外の消費だ。

 CAAMは、第2四半期に新型コロナの感染拡大が抑制されたとしても通年の中国の新車販売台数は15%程度の減少を余儀なくされるとし、海外の感染拡大が第3四半期以降も続くという悲観論に立てば25%の減少、2000万台の大台を割り込む可能性に言及した。期待の新エネ車についても4月の販売は同26・5%減の7・2万台と落ち込み、22年まで補助金政策の継続が決まったにもかかわらず低迷が続く。

 内外需ともに足元では本格回復とは言い難い。4月の小売売上高は7・5%のマイナス。「生活必需品は売れているが、全体としてはまだ買い控えがみられる」(東レ)。

 輸出に依存した外需向け産業も先行きは不透明だ。4月の輸出は大方の予想に反して3・5%増え、3月(6・8%減)からプラスに転じたものの、パソコンやマスクなどの特需に支えられた側面が大きい。携帯電話や衣類などの輸出は前年を下回って推移しており、「物流の遅延など現場にはいぜんとして混乱も残る」(日系商社)。(随時掲載)

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