ポストリチウムイオン2次電池(LiB)の実現に向けた取り組みが激しさを増している。高容量化を筆頭にLiBの研究開発が盛んだが、その性能限界が見えたことも研究者の間では周知の事実。何より製造に必須となるコバルトやニッケルなどのレアメタルの資源問題を抱えている。カーボンニュートラルが求められる中で「地球に優しい電池」が今後の開発のキーワードとなりそうだ。

 LiB関連メーカーでは、高まる環境ニーズに対応しようと、長寿命化に向けた研究が進む。電気自動車(EV)で使用したLiBを定置用に再利用できれば、製品のライフサイクルの観点からも地球に優しい。またリサイクル技術の開発も活況で、製錬技術を持つ非鉄各社が本格的な事業化を計画している。

 一方、新たな電池として各メーカーが開発に取り組むのが、資源が豊富な材料を用いた次世代電池。中国CATLは、ナトリウムイオン2次電池(NiB)の開発に力を注ぐ。食塩の化合物であるナトリウムは海水などに多く存在するため、電池のコストダウンが期待される。現状のエネルギー密度は最大で160ワット時/キログラムとLiBに見劣りするものの、マイナス20度Cの低温環境下でも90%以上の容量を維持するという。

 GSユアサなどが開発を進めるリチウム硫黄電池(LiS)も興味深い。活物質の硫黄は高い理論容量を持つことに加え、低コストで資源的にも豊富に存在する。多硫化物が電解液へ溶解すると硫黄正極の性能が低下するなどの課題が挙げられているものの、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とのプロジェクトで400ワット時/キログラム級の実証に成功。蓄電池制御システムについてもプロトタイプモデルの軽量化設計を完了するなど、将来的には軽量蓄電池として航空機への適用を視野に入れる。

 ニッケル・カドミウム(ニッカド)電池やニッケル水素電池が生活の中で多く使用されているように、新たな電池が既存の電池すべてを置き換えることはあり得ない。高容量化や長寿命化、低コスト化が、さらに進めば、LiBは間違いなく今後も存在し続けよう。しかし搭載する製品に適した電池は数多くあってよい。例えばCATLがNiBとLiBの1パッケージ化を狙うように、異なる電池を組み合わせ、弱点を補完し合えるような蓄電システムの実現も夢ではなくなる。

 電池は擦り合わせ・組み合わせで、その性能が決まる。エコな新電池は、電池単体としてはもちろんのこと、LiBとの組み合わせによる需要拡大にも期待したい。

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