住友化学の十倉雅和会長が6月1日、病気療養中で任期途中で退任する中西宏明会長の後任として、日本経済団体連合会(経団連)の会長に就く。任期は2025年6月までの2期4年だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応やカーボンニュートラル実現という大きな課題を抱えるなかで、力強い経済復活を目指す日本にとって極めて重要な4年間といえる。持続可能社会におけるソリューションプロバイダーたる化学産業の英知を注入し、オールジャパンの体制で経済活性化を牽引する十倉経団連に期待する。

 折しも今年は伊藤忠商事の石井敬太氏、三井物産の堀健一氏と、日本を代表する総合商社で相次ぎ化学品部門出身の社長が誕生した。また4月には、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長が6月の株主総会で東京電力の会長に就任することも発表された。そうした動きのなかで十倉経団連が誕生することとなった。化学業界を担ってきたリーダーが日本の進むべき道筋を示す絶好の機会が到来したといえる。

 十倉新会長は、中西現会長との交代会見において、当面の課題としてコロナ感染防止と経済の両立を挙げたうえで中西会長が昨年11月策定した「。新成長戦略」の5つの柱であるDX、働き方改革、地方創生、国際経済秩序の再構築、グリーン成長の実現-の具体化を目指すと表明した。

 なかでも、強く共感するという国際経済秩序の再構築については「ソーシャル・ポイント・オブ・ビュー(社会に資する視点)をもって、マルチステークホルダーと価値を協創するような資本主義市場経済の実現を目指すべき」と述べた。さらに、とくに重要な政策としてDXとカーボンニュートラルを挙げ、政府と力を合わせて世界をリードしていく考えを示した。

 菅政権が表明した2050年のカーボンユートラル実現は、化学産業にとって重い課題である一方、新たな成長を実現するための好機であるとの認識も強まっている。実現するには、先端技術と数々の新たなイノベーションが必要となることが背景にある。その要の技術を握るのが化学産業だからだ。

 ただしカーボンニュートラルで世界をリードするには、政府、自治体、経済界、アカデミアなどが一致団結して、オールジャパン、チームジャパンで挑まねばならない。画期的な技術に加えて、膨大なインフラ投資、国際的に整合の取れた制度設計、資源国との協力関係など多くのものがが求められるためだ。化学で育ったリーダーが、その牽引役を担う時代が到来した。

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