新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、企業のマーケティング活動にも大きな影響を与えそうだ。ウィズコロナの時代にあって、消費者の意識は、それ以前とは大きな変化がみられるからだ。

 その様子は日本テラデータが先ごろ公表した「新型コロナによる日本の消費行動と意識への影響に関する最新調査結果と分析」から読み解ける。5月初旬に1000サンプルをインターネットで回収したもので、「所有志向」については、4割弱が「モノやサービスは個人が所有して使うもの」と回答したのに対して、「共有して使う」と答えた割合は16・5%にとどまった。「自身に関する精神的変化」について問うと「外面への関心」の21・5%に対して「内面への関心」が27・2%と上回った。「全体の不安感が自己管理の危機意識を増大させる」と日本テラデータは分析している。

 さらにインターネット関連でも、興味深いデータが得られている。6割弱が「オンライン化が加速している」と回答しており、12・7%の消費者が「今後はSNSで情報発信をしたい」と感じている。

 インターネットが定着し、ライフスタイルが多様化するなかで起こった新型コロナの感染拡大。消費者の意識をいち早く見抜き、対応することが重要になる。その有効な手を考える際に「意識データ」の活用がカギになる。解の一つとして注目を集めるのがオムニチャネルとAI(人工知能)の融合だ。

 オムニチャネルとは、実店舗とネット通販、カタログ通販などをシームレスに連携させ、顧客にサービスを提供する取り組み。シャツの小売りを展開する日清紡テキスタイルなどがオムニチャネルを用いた販売を強化しており、小売業の戦略の一つとして知られている。消費者の声をリアルタイムに捉え、AIで消費者の意識を推察することで、新たな顧客体験を創造できるのではないだろうか。

 例えば自動車のCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)化が本格化しているが、消費者意識の変化を読み取れば、所有・占有型と融合したシェアリングサービスが誕生する可能性も十分にある。これまではシェアリングカーに抗菌・防汚を施した内装材を使うといった取り組みが中心だったが、使い捨てのカーシートなどの需要も顕在化しそうだ。

 素材メーカーといえども、最終消費者とダイレクトにつながることのできる時代だ。企業自らが積極的に情報を開示することで、消費者の意識の変化を浮き彫りにするような取り組みを期待したい。

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