新型コロナウイルス感染が世界的に拡大、深刻さを増している。日本でも経済活動に大きな影響が出ており、そのなかで事業を継続すべく、各社がさまざまな対応を進めている。
 その一つがテレワーク。政府は東京オリンピックを前に導入を促進してきたが、大企業やIT系企業が中心で、さほど普及が進まなかった。しかし新型コロナによる不要不急な外出の自粛などを受け、企業規模を問わず急速に導入されつつある。2020年は、日本人の働き方の一大転換点となるだろう。
 今回が初めてのテレワークという人も多い。パーソル総合研究所が3月上旬に行った2万人規模の調査では、正社員のテレワーク実施率は13・2%で、そのうち初めての人は47・8%。簡易的な推計では、全国で360万人の正社員がテレワークを行っており、うち170万人が初めてという計算だ。業務の性格上テレワークを行えない人もいるが、調査では、希望してもできない人が33・7%いた。制度やICT環境の未整備などが主な理由だ。
 テレワークを行ってみて「思ったよりも業務をこなせる、生産性も落ちていない」と感じた人も多いだろう。1月から在宅勤務体制を敷くGMOインターネットグループが公表している従業員の感想では、多くが勉強時間や家族との時間など「自由時間が増えた」ことをメリットに挙げ「休校になっても子供の心配をしなくていい」「同僚から話しかけられることもなく、作業効率が上がった」「通勤時間が減り、満員電車に乗らなくてすむ」との声が挙がった。
 デメリットは作業環境の整備や費用負担。回線の負荷増大で通信が不安定になったり、マンション内で在宅勤務者が増えると共用回線の逼迫を招く。暖房など光熱費も増えるだろう。
 日本では本格的なテレワークは始まったばかり。導入拡大の余地は大きい。辛い状況だが成長につながるビッグチャンスと捉え、頭を切り換えよう。現在は個々でテレワークの経験、ノウハウを積み上げている段階。化学をはじめとした製造業も、5G(第5世代通信)やIoT(モノのインターネット)などを活用して業務を効率化。その力を社会に役立つ新たな技術や製品、ソリューション、サービスの実現に生かして欲しい。
 新型コロナウイルスの影響は非常に大きく、長期戦を覚悟すべきかもしれない。しかし、これを機に日本人の働き方が大きく進化するのは確かだ。新たな働き方を実践し、大きな不安がなく、より充実した豊かな生活が送れる社会に変わっていくことを強く期待する。

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