石油業界が製油所のさらなる統廃合を迫られつつある。新型コロナウイルスの感染拡大以前から燃料油需要は減少傾向にあったが、コロナによる移動制限によって自動車燃料はもちろんジェット燃料も大きく落ち込んでいる。コロナが収束しても元に戻る期待は薄く、むしろ当初予測より需要の減少が加速する公算が大きい。石油業界は再編が一段落し、過当競争から脱して安定収益を稼いでいる間に、燃料油に依存しないポートフォリオへと改革を進める手筈だったが、コロナを機に再び供給過剰が深刻化する恐れがある。エネルギーの安定供給という責務を担う業界故に、国を挙げて最適配置を目指した製油所統廃合の検討を急ぐべきだ。

 かつて石油業界はプレーヤーが乱立し、過当競争による供給過剰が常態化していた。この10年間、エネルギー供給構造高度化法の下、設備能力削減に加え合併や経営統合が進んだ結果、ENEOS、出光興産、コスモの3社グループに集約されている。再編後も各社は製油所の統廃合などを実行に移してきた。そして過当競争から抜け出し、高水準の原油価格にも恵まれ、17年度・18年度は好業績を謳歌した。しかし18年後半から原油価格は下落し、今年3月、4月には一時20ドルを下回る水準にいたる。足元では40ドル前後まで戻しているが、コロナによる下押し圧力は根強く残る。

 コロナは社会のあり方を大きく変えつつある。日本はコロナによってITインフラの脆弱さが露呈したが今後、急速に拡充される方向へ向かうだろう。高度情報通信ネットワークが広がれば、モノの移動は続くが人の移動は減少する。これまで支配的となっている「2040年に燃料油需要が半減する」との見方は修正を迫られ、そのスピードが速まる可能性が高い。コスモエネルギーホールディングスの桐山浩社長は「脱石油の流れが激しく加速する『変節点』が突然来るような気がしている」と警戒を強める。

 コロナだけではない。自動車の電動化、循環型経済の動きなど石油業界を取り巻く厳しい環境は悠長な改革を待ってくれないだろう。一方で資源のない日本は、エネルギーの安定供給責任上、製油所を捨て去るわけにはいかない。個社の利害を越えて、業界と国を挙げて地域ごとの最適な配置を目指すことが肝要だ。希望の光もある。石油化学と組み、ケミカルリサイクル技術で世界をリードできる可能性がある。石化とも踏み込んだ連携を図り、最適な製油所配置による強靱な立ち姿を描き、それを実行に移すまで、残り時間は多くはない。

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